ある女児向け雑誌が、ツイッター上で炎上した。
話題になっているのは『おしゃカワ!ビューティー大じてん』。表紙にはアニメ調の女の子がポーズを決め、「クラスで気になる女の子」の文字が躍る。「ナミダぶくろの作り方」「まほうのコトバ、さしすせそ」といった、男子にモテるためのさまざまなテクニックを指南する内容が書かれたページの写真がツイッター上にアップされると、「時代遅れのジェンダー観」「子どもに読ませたくない」などと拡散された。
これが大問題だとして声を上げるのは、虐待などを受けた10代の女性たちを支援する一般社団法人「Colabo」代表の仁藤夢乃さんだ。問題となった投稿に対して5月8日、自身のツイッターでつぶやいた。
<男を立てる「さしすせそ」 こんなことを小学生に教えるなんて…。男子に見た目を評価されることを当然の前提とし、ピュアさ、聞き・褒め上手がモテのポイントと。オシャレやメイクはモテるために必要なこととすり込み、従順な女子を育てようとする。女子に、自分のことを大切にできなくさせる雑誌だ。>
あらためて仁藤さんに話を聞いた。
「メイクやおしゃれは本来、自分が自分らしくあるためにするものだと思うのですが、日本では男性に喜ばれるため、男性に選ばれるためにするものというような価値観がいまだに残っています。それは当たり前のことではないんだよと教えなくてはいけないはずです」
仁藤さんはこういった雑誌を目にした女児が、「本当はこうありたい」という自分の意志を大事にすることができず、自信をなくしてしまうことを危惧する。
「この雑誌は、男性に従順に従って選ばれる存在になることが女の子として大事です、ということを教えているも同然です。こうした男性上位の考え方は問題ですし、そもそも男性に選ばれる必要なんてないし、女性が選ぶことだってある。男性なんていなくたって生きていけるわけですから」
一方で、こうした雑誌の特徴は男性向けのものにも当てはまるのではないか。「女性はこう口説け」というような主旨の雑誌はよく見かける。
「そういった女性の口説き方、オトし方といった雑誌にも、こうすれば女の子は付いて来るよという女性蔑視の意識が入っていると思います。男性が選択する側であるという意識が共通しています」
男性上位の意識は、仁藤さんが交流する若年層の女性にも根強く残っているという。
「発信する側の、大人の問題です。子どもたちは雑誌を見れば、『こういうものなんだ』と思ってしまいます。大人が発信するメッセージに問題があると、子どもに深刻な影響を与えてしまうので、今回もこうして問題を指摘しました」
冒頭の雑誌を2年前に発行した成美堂出版は「話題になっていることはまったく知りませんでした。でも、他社さんにもこういった本はたくさんあると思うので……」(担当者)と戸惑いを隠さない。
元となったツイートは16日現在、「いいね」が14万を超え、ジェンダー問題の根深さを示している。(本誌・秦正理)
※週刊朝日オンライン限定記事