不安に負けないということで思い出すのが、「日本のマザー・テレサ」と呼ばれた故・佐藤初女さんの言葉です。初女さんとは年に1回はお酒を酌み交わす、いわば飲み友達でした。
彼女の著書『こころ咲かせて』(サンマーク出版)に「心を晴らす方法」という項目があります。ここでは不安というより、苦しみというもっと厳しい心の状態に対して語っているのですが、不安に対しても同様だと思います。
一つ目の方法は小さな行動を起こすことです。
「私の場合、そんな小さな行動とは、食べものをつくることです。少しずつ育み慈しみ、心をこめてていねいに調理しているうちに、いつしか静かに無心になっていきます」(同書)
二つ目は信頼できる友人に打ち明けることです。
「打ち明けるといっても、相談したり愚痴をこぼすというのではなく、自分自身で心を整理しながら話すという感じです。気持ちをすっかりわかってくれる人に聞いてもらうだけで、とても楽になるものです」(同)
そして、三つ目は初女さんならではの言葉です。
「立ち直る第一歩は、困っている人たちに奉仕することかもしれません。他の人たちを慈しむときに、人間は自分がおかれた状況を大きな目で見つめ、与えられた恵みに気づくことができるからです」(同)
初女さんの三つの言葉を心に刻んでおきたいですね。
※週刊朝日 2020年5月29日号