辞職した黒川弘務前東京高検検事長(C) 朝日新聞社
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黒川弘務前東京高検検事長と後任となった林真琴・名古屋高検検事長(C)朝日新聞社 
黒川弘務前東京高検検事長と後任となった林真琴・名古屋高検検事長(C)朝日新聞社 

 東京高検検事長を辞任した黒川弘務氏の賭け麻雀問題をめぐり、監督責任を問われた森雅子法相は5月22日、進退伺を出したが、安倍晋三首相に慰留され残留した。

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 野党などから追及された再調査も菅義偉官房長官は不要とし、黒川氏への約7千万円の退職金は「国家公務員退職手当法の規定に基づいて支給される」と会見で語った。自民党幹部はこう言う。

「黒川氏はやめる表明が遅かったね。黒川氏を『法務顧問』と言っていた菅官房長官にも辞職の連絡はなかったそうだ。こんな状況下で賭け麻雀とは、どこかで慢心があったんだろうね。賭け麻雀の件も、安倍政権とベッタリに見える黒川氏に反発する庁内の筋からネタが漏れたようだ。しかし、安倍政権にとっては大打撃ですよ」

 現職の検事もこう語る。

「検察庁法改正のタイミングで賭け麻雀はまずい。辞職どころか懲戒免職でもおかしくない。特捜部などは捜査中、飲みにも食事にもいけない。麻雀なんてもっとダメですよ。それなのに三密はアウトという時に何度もやっていた。今は広島で河井克行前法相夫妻の捜査の真っ最中です。広島地検、大阪地検、東京地検の検事らが頑張っている。国民すべてがコロナで自粛しているような時期に、賭け麻雀では恰好がつきません。黒川氏につきあうマスコミもダメだが、なぜ一緒に彼らがやるかといえば、ネタをとるためでしょう。ある意味、癒着です。黒川氏の麻雀好きは検察では有名でしたが、ここまで頻繁にやっているとはね。現職検事として、悲しいね。検察は賭博罪で起訴する立場なんですから…」

 かつて黒川氏と麻雀したという先輩の検察OBもこう批判する。

「検事は麻雀好きな人が多い。黒川は新任検事のころから暇があればやっていた。虎ノ門に検事がたまる雀荘で検事相手に打っていた。検事相手ではそう強くはなかった。テンピン(1000点につき100円)のレートだった。しかし、黒川は負けると黙っていられない性格なのか、打つ時間が長かった。今回は単純賭博として立件されてもおかしくない案件だ。黒川は検事総長になりたかったんだろうけど、定年延長という強引なことをして、賭け麻雀というブーメランが返ってきた。こうなる前に自分で辞めておけばよかったのに…」

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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