「マイナンバーの口座紐づけ義務化」というニュースに驚いた方も多いのではないか。ことの発端は、新型コロナウイルス対策で実施中の1人10万円の給付だ。
「ネットで申請して2日後に60万円振り込み」などの海外の事例と比べ、日本は役所と国民の間で申請書を郵送でやり取りし、いつ10万円がもらえるのかわからない。補正予算の遅れと手続きでの遅れに、国民の不満は爆発寸前だ。
そこで、安倍政権は苦し紛れに「マイナンバーカードを使えばネット申請ですぐ給付される」と宣伝した。
マイナンバーカード保有者は国民の16%程度。それくらいなら十分対応できると考えたのだろう。だが、その考えは甘かった。コロナ禍で困窮する人は激増中だ。10万円をすぐもらいたいという人は非常に多い。マイナンバーカードの手続きのために役所で3時間待ちというニュースも流れている。
さらに、ネットの申請サイトの入力ミスチェックの仕組みがお粗末で、申請内容を役所の職員が手作業で確認する手間が膨大となった。「ネット申請のほうが郵送より遅い」という役所が増え、19日には高松市がネット申請中止を発表。追随する役所が続出しそうだ。
そもそも、諸外国では、かなり前から社会保障番号や納税者番号を国民一人ひとりに割り当て、銀行口座にも紐づけて、政府や自治体からの各種給付に活用している。つまり、個人番号は、市民が行政からサービスを受けるための手段、言い換えれば、憲法上の社会権を実現する手段として社会に受け入れられてきた。だからこそ、日本では嫌われる銀行口座の紐づけもできるのだ。
一方、日本のマイナンバーカードは、主に行政事務の効率化という役所の都合で推進されたので、市民の理解は進まず、一向に普及しなかった。
自民党は、今回のような給付の遅れを避けるために、マイナンバーと銀行口座の紐づけを提案した。「国民のため」の「紐づけ」というポーズである。高市早苗総務相も前向きだ。