




緊急事態宣言は解除されたが、人が大勢集まるイベントの開催はいまだハードルが高い。あらゆるイベントが延期や中止に追い込まれた2020年5月、日本最大級の陶器市と、百貨店での関西最大級のお茶の催事がオンラインで開催。二つの祭典に、どのような反応があったのか。
■歴史ある陶器市 若い女性が一気に増えた
「スタートして5分。やった! と思いました」
毎年ゴールデンウイークの期間に佐賀県有田町で開催される有田陶器市。コロナ禍により、無期限延期が決まったのは3月27日のことだ。
1896(明治29)年から続く伝統ある市で、ことしで117回目を迎えるはずだった。過去には戦争で中止になったことはあったが、疫病が理由で延期や中止されたことはない。7日間で120万人を集客し、出店数450軒。日本最大級の陶器の祭典だ。有田焼の新作や限定品、福袋、セットもののバラ売りや、家で使うには問題のないお得な二級品などが出され、市ならではの楽しみがある。
陶器市を運営する有田町商工会議所の事務局長、川原耕洋さんはこう話す。
「有田の陶器は全国のホテルや旅館に向けた業務用の食器が主な販路でしたが、新型コロナの影響で宿泊施設はそれどころではなくなりました。そこへ陶器市も無期限延期。何かしなくては、手を打たないわけにはいかないと思いました」
延期が決まってほどなく、有田町の松尾佳昭町長から商工会議所に打診があった。「予定していた4月29日から5月5日までと同じ日程で、オンラインで陶器市を開催できないか」。開催まで1カ月しかない。
すぐにウェブサイトを作ろうと動いたが、そもそもネット販売をしたことのない店が多い。どこも参加しないのでは。なんとか50軒くらい集められたら。不安に思いながら説明会を開くと、会場には入りきれないほどの人が来た。オンラインの経験がない店も、「やってみたい」と次々に参加を表明した。
結局、出店したのは129軒。そのうちネット販売の経験がない店が45軒。各店のネットショップのページをリンクさせる予定だったが、何しろホームページがない。写真もない。商工会議所の担当職員8人が手分けをして、45軒のホームページ作りをゼロから手伝った。職員自ら撮影を学び、一眼レフカメラで商品を撮っていく。県の呼びかけでプロの写真家からの協力も得られた。