■章男氏の一代一業

 2018年、モビリティ・カンパニーへの変革を決め、カーメーカーからの脱却を宣言した。同年、トヨタからソフトウェア部門を切り出し、東京・日本橋に現ウーブン・プラネット・ホールディングスを設立した。

 章男氏は、この会社に私財50億円を投資した。その意味について、「“私個人”の意思を入れ込めるようにしたいと思い、“個人の出資”という手段を選びました」という。

「ウーブン・シティ」構想の発表は、2020年である。自動運転車やロボットが活躍する未来都市だ。水素社会の実現も視野に入っている。

 豊田家には、“一代一業”という家訓がある。章男氏は、こう語っている。

「“一代一業”というミッションは、私自身、生まれたときからずっと聞かされてきた言葉です。継承者として、何かしら未来への橋渡しを、人生のどこかでしなきゃいけないと思ってきた」

 章男氏が定めた“一代一業”こそが、「ウーブン・シティ」である。

「評価は50年後でいい」と、章男氏は述べている。「ウーブン・シティ」は、それほどの大事業だ。

「次世代がつくる未来。私はそれに賭けてみたい」

 と、章男氏は語っている。

 章男氏は、4月以降も新社長をサポートしつつ、変革を進めていくだろう。

「新社長には、ひとりで経営しようと思わずに、チームで経営してほしいと伝えました」

 と、章男氏は会見で述べている。

 トヨタは、日本の未来を背負っている。日本の自動車産業、さらには日本経済の浮沈がかかっているだけに、トヨタの社長交代の持つ意味は極めて大きいといえるだろう。(ジャーナリスト・片山修)

>>【前編の記事】トヨタ新社長、豊田章男氏にそっくり 「努力を惜しまない」「クルマ愛」など多くの共通点

AERA 2023年2月13日号より抜粋

こちらの記事もおすすめ トヨタ新社長、豊田章男氏にそっくり 「努力を惜しまない」「クルマ愛」など多くの共通点
[AERA最新号はこちら]