漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「リモートドラマ Living」(NHK総合 5月30日・6月6日23:30~ほか)をウォッチした。
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演者とスタッフが直接会うことなく撮影するリモートドラマに積極的なNHK。5月上旬には「今だから、新作ドラマ作ってみました」を放送。そして今回は「Living」だ。
1話は広瀬アリス、広瀬すず姉妹、2話は永山瑛太、永山絢斗の兄弟。3話は中尾明慶、仲里依紗で、4話は青木崇高、優香(声のみ)と、実際の夫婦が共演する。
家族なんだから、密に接触してもOKてかい?(夫婦はともかく、大人な姉妹や兄弟はあまり一緒に暮らしてないと思うけど)
てことで、これまでありがちな分割画面&正面顔から解き放たれ、お互いを撮影し合ったという映像はカット割りもスムーズで、リモートじゃないみたい。
そして物語は、まさに脚本・坂元裕二の世界。これはリモートというより、独特のクセがあるサカモートドラマなのだ。
締め切りに追いつめられた作家(阿部サダヲ)と、小さなドングリ(声・壇蜜)が交わす問答。そこから彼は四つの家族のファンタジーを紡ぎ出す。
広瀬姉妹は、多数派ホモサピエンスに押され絶滅間近のネアンデルタール人。とはいえ「ギャートルズ」みたいな格好ではなく、ハイセンスなリビングで生ハムをおしゃれにパクつきながら恋バナを繰り広げ、鼻でハーモニカを吹きまくる。なんだこりゃ。
永山兄弟は後からできた国境のせいで、別の国の住民になる。もうすぐ戦争が始まるけれど、2人は仲よくコロッケを作りながら、「もし戦場で会ったら俺を撃つ?」と笑顔で語り合う。
この先のいつかに「滅び」を予感する、どこか不穏な世界で、延々と続けるたわいもない会話。これこそが坂元印だ。以前「カルテット」というドラマに出てきた「唐揚げにレモンをかけるかかけないか問題」。
何も言わずに当たり前のように唐揚げにレモンをかけるなんて信じられない。
「唐揚げにレモンするってことはね、不可逆なんだよ。二度と元には戻れないの」というセリフを思い出す。
そう、私たちも今や唐揚げレモンだ。不可逆だ。コロナ以前の世界にはもう戻れない。そして「滅び」を予感しながらも、馬鹿話を続けるだろう。
例えばこのドラマで気づいたこと。姉妹、兄弟は何が似てるって鼻がそっくり。鼻の穴うり二つ。鼻のDNA強いね。そんな馬鹿話。
※週刊朝日 2020年6月19日号