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 河井案里参院議員(46)が広島選挙区で初当選した昨年7月の参院選をめぐり、票の取りまとめを依頼する趣旨で約2600万円の現金を地元議員ら約100人にばらまいた公職選挙法違反(買収)の疑いで、東京地検特捜部は18日午後、夫で衆院議員の克行前法相(57)と案里氏を逮捕した。

【写真】「これが河井前法務相から受け取った現ナマ30万円」証拠品を公開

 国会議員が自身の選挙でカネをばらまき、夫妻で逮捕されるという前代未聞の展開。自民党の法相経験者はこう語る。

「戦後の混乱期でもこんな事件はなかった。憲政史上に残るとんでもない事件と断言できる」

 河井夫妻から現金30万円をもらった地元の県議Aさんはこう語る。

「いきなり電話してきて、ちょっと行くからという。選挙戦なので来られてもと思うたが、安倍首相の側近でもある克行氏が来るならと会うことにした。すると『選挙頑張って』と言いながら、白い封筒を取り出して、私のポケットに入れようとする。『先生、これは』というと『お世話になっていますから』とポケットにねじ込んで帰った。話したのはたぶん5分くらい。とんでもないものをねじ込むなと思ったよ」

 Aさんはすぐ返そうと思ったが、会う機会もないし、電話を入れても「当選祝いだ」と克行氏は言うばかり。ズルズルと手元に置いていたという。このようなエピソードを広島の地方議員らから、いくつも聞かされた。別の地方議員、Bさんもこう証言する。

「先生、お茶代だからと白い封筒を置いて帰った。お茶代だ、陣中見舞いだというが、案里氏の参院選がある。そのままにしていたが、まずいと思い、政治資金収支報告書に掲載することにした。それは検察の取り調べでも説明した」

 地方議員らが共通して話すのが、克行氏の手際のよさだ。どちらも克行氏と会っていたのは5分にも満たない。

「その5分間の頃あいをみて、さっと封筒を取り出して、置いてゆく。検事に『手慣れていたか』と聞かれたので『確かにそうだ』『断れないように置いて帰った』と答えました。すると検事は『やはりね。あちこちでやっているようだ』と言っていた。検事さんは取り調べの際、克行氏と案里氏がカネをばらまいた先が記されたリストのようなものを手元で見ていた」(前出Aさん) 

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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