「メンバーを信頼する。人に聞くのではなく、なるべく自分で解決する。そんな自立と信頼の姿勢がベースにありました」

 これらの基本姿勢が、のちのビジネスに生きた。

 まずは、開発していたサービスをリリースしたとき。まだまだ小さな会社ゆえ、大規模な営業部隊をつくることはできず、豆田さんがオンライン営業をすることになった。だが、企業向けサービスをオンラインで会わずに売るのは至難の業。マメなコミュニケーションで信頼を培った。

「ホームページに問い合わせ窓口を設け、連絡が入ったら、すぐに返信しました。小さなことですが、この基本は守りました」

 土日もMacBookは手放さず、家族旅行中にハワイの空港で対応したこともあった。あまりにも返信が早すぎて「マメダさんは架空の人物で、何人かいる」と噂になったほど。多数の参加者がいる場合はプレゼンに出向くこともあったが、1度も会わずに契約する事例も多く、契約数は順調に伸びた。

 2回目は、豆田さんが自身の事情で、福岡との2拠点生活を行ったとき。本社は東京、自身は福岡で働くことになったが、そもそもメンバーともお客様とも「会えない」前提で働いていたため、大きな混乱は起きなかった。

■ロックダウン下でも生きた「信じる」マネジメント

 そして、今年。豆田さんは18年にタイ法人の代表として現地に移住したが、今年4月に新型コロナウイルスの影響でロックダウンが起きた。タイ法人には6人の部下がおり、原則出社するワークスタイルをとっていたが、豆田さんの「部下を信頼して任せる」というマネジメントスタイルはロックダウン下も生きた。

 もともと、部下に具体的な指示は出さず、状況を数値でチェックするスタイル。例えばタイ法人では、お客様からの問い合わせをLINE経由で受けている。具体的な対応は部下に委ねるものの「問い合わせ件数」は必ずウオッチ(図2)。件数が膨らんだら声をかけ、問題点を聞き、対策をとる。

 セールス部門は「オンラインでのプレゼン数」や「コール数」、マーケティング部門は「HPのアクセス数」などの目標を設けている。ただし、目標達成の方法は部下が考えるという自立した組織。だからロックダウン時も、部下はサボるどころか「自分たちの作業内容をみんなで共有したい」と申し出て、業務共有シートができた(図3)。それぞれの様子が「見える化」されたら、お互いを思いやることもできるのでは、と。

 リモートワークが生んだ自立的な組織。豆田さんはその鉄則をこう考える。
「会えないなかで信頼を勝ち取るには、圧倒的なgiveが必要。情報でも意見でも、まずは自分から何かを差し出す。その姿勢が必要です」
(文・カスタム出版部)