人間としてのあり方や生き方を問いかけてきた作家・下重暁子氏の連載「ときめきは前ぶれもなく」。今回は、新型コロナウイルス対策の特別定額給付金について。
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国や都から新型コロナウイルスに関する給付金が支給されつつある。
しかしなぜこんなに面倒くさいものなのか。こういう時期なのだから、できるだけ簡単にわかりやすく、高齢者でもすぐ対処できる形でなければ意味がない。
オンラインでの申請などといわれても、一人暮らしのお年寄りなど、誰に聞いてみることもできず、第一オンラインが何かさえわからない人が多いと思う。
いったい誰を標準にして申請手順を考えているのだろう。
あげくの果てに、なかなか給付金が届かないのは、申請者側に不備があるからだという。首相の国会答弁でも、現場は一生懸命やっているのだが書類に不備があるからできないのだと、あたかもこちらに責任があるかのようにいわれる。
もしそうだとしても、多くの申請者に理解しがたく不備になりがちな書類など一考の余地がある。
新型コロナウイルスに関しては最初から外国語(英語)が飛び交った。クラスター、オーバーシュート、ロックダウン等々、理解できない人がかなりいたかもしれない。ある介護施設では言葉がわからないために、いたずらに恐怖をあおられた人や、鬱になる人も出たとか。
なぜ、マスコミでわかりやすく説明することをしないのか。そもそも専門家会議で使われた医学用語がそのまま使われているケースもある。
私はテレビでコメントすることもあるので、リモートもオンラインも体験して知っているが、高齢者の中には、おいてけぼりを食った気分になり、疎外感を味わう人も多いという話を聞いた。
朝日新聞の「声」欄にも、注目すべき投書があった。給付金の振込先口座がなぜ個人の名義ではなく、世帯主の名義なのかという疑問が呈されていた。我が家は私も仕事をずっとしているので個人名義だが、投書した方は、主婦であっても世帯でひとくくりはおかしいという意見だった。全く同感である。