東日本大震災から一年が過ぎようとしている。生まれてはじめてボランティア活動をした人も多かったのではないだろうか。生物学者で、早稲田大学国際教養学部教授の池田清彦氏は、そんな一人として「ふんばろう東日本支援プロジェクト」という日本最大級のボランティア組織を立ち上げた西條剛央さんについて語った。
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西條君は正規の学校教育上の師弟ではなく、勝手に弟子入りしてきた押しかけ弟子である。私の構造主義科学論と竹田青嗣の現象学をバックボーンにして、構造構成主義というメタ理論を創った新進気鋭の理論家である。
西條君の実家は仙台だ。御両親は無事だったが伯父さんは津波で亡くなられた。大震災の後、はじめて支援に行った南三陸町の惨状を目の当たりにして、「自分にできることはすべてやろうと決意した」と電話の向こうで語っていたのは、まだ寒い四月の初めであったろうか。それからの西條君の行動は電光石火であった。
最近出版された西條剛央著『人を助けるすんごい仕組み----ボランティア経験のない僕が、日本最大級の支援組織をどうつくったのか』(ダイヤモンド社)を読んで、西條君がどんな原理に基づいて組織を回していったかを知り、あらためて西條君の構造構成主義の威力に舌を巻いた。それはつづめて言えば現場主義である。方法の有効性は状況と目的に応じて決まる、と西條君は言う。具体的にどうしたかは本書を是非読んで欲しい。本書は組織論のメタ原理としても秀逸なのであらゆる組織の指導者に役立つと思う。
※週刊朝日 2012年3月16日号