東京工業大・益一哉学長 (大学提供)
東京工業大・益一哉学長 (大学提供)

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、全国の大学が学びの機会をどう確保するかとともに、新しい教育のあり方を模索している。東京工業大学の益一哉学長がその行く末を語る。

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 コロナ禍ではネガティブな側面ばかりがクローズアップされますが、我々は現在の事態を前向きに捉え、対応を進めたいと考えています。

 東京工業大学は理工系総合大学として、未来を創る人材が輩出し、また自らも未来を創り出してきました。単に研究して何かを作るというだけではなく、未来社会のありかたを世に問う取り組みも必要だと考え、2018年10月に「未来社会DESIGN機構」を設置しました。

 活動の一環として作成した東工大未来年表には、2040年、日本社会は仕事や働き方が個人の嗜好に即して自由に選べるようになる「おうち完結生活」が実現する、というシナリオを描きました。教育や労働などあらゆる場面でオンライン化が進む現在の状況は、当時我々がありたいと思っていた未来がやってきたと言えます。

 新型コロナの影響に関して、具体的にどのような対応策を取ったかもお話しします。感染拡大にともない、東工大では一般教養などを含め、ほぼ全ての講義がオンライン形式へと移行しました。実験・実習に関してはカリキュラムを組み替え、大学に来ないとできないものは8月以降に回すという形を取りました。

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