さらに、パラリンピックでは事前に国際大会を開かなければならないという事情もある。
パラ競技では、選手の障害の部位や程度によって運動能力に差が出る。そのため、障害が同等の選手同士で競技ができるように「クラス分け」が欠かせない。障害のクラスが変わることでライバルが増えたり、逆に障害の症状が進行したことでメダルに近づいたりする選手もいる。障害を重く見せる「障害偽装」も頻発している。そこで各国の判定員が集まって国際大会でクラス分けが実施されるのが通例だ。
あるパラリンピック選手の関係者は、半ば諦めたようにこう話す。
「選手選考は国内でできても、欧州や米国でこれほど感染が広がると、障害のある選手が一つの場所に集まるのは難しい。再延期や中止も覚悟している」
前出の有森さんは言う。
「五輪は平和な社会があって初めて成り立つスポーツの祭典です。選手にとってはつらいですが、開催できないときがあるのもしょうがない。むしろ、世界中でコロナへの不安が残ったまま1年後の開催に前のめりになるのは、本当にスポーツを応援し、支え、愛する人たちを失うことになりかねないのではないでしょうか」
(本誌・西岡千史)
※週刊朝日 2020年7月31日号