だが、新しい働き方が定着するかに見えたのもつかの間、5月25日に緊急事態宣言が解除されると、テレワークは縮小に向かう。グーグルの分析による出勤者数は、6月には12.9%減にまで減少幅が縮小。パーソル総合研究所が5月29日~6月2日に行った全国調査でも、テレワーク実施率は25.7%と4月中旬の調査より2.2ポイント低下した。回答日別では、5月29日の金曜日は30.5%だったのに対し、週明けの6月1日は23.0%と、7.5ポイントもテレワーク実施率が減少。緊急事態宣言解除の翌週から出社する傾向が強くなったことがうかがえる。
背景にあるのは、テレワークで生産性が下がったとの見方だ。
前出の内閣府調査では、テレワークで仕事の効率性・生産性が下がったと回答した人は47.7%。一方、上がったとの回答は9.7%にとどまっている。野村総合研究所(NRI)が新型コロナ感染拡大以降に在宅勤務を行った人を対象に実施した5月の調査でも、仕事の生産性が下がったとする回答が49.7%なのに対し、生産性が上がったとの回答は16.1%。在宅勤務より、オフィス勤務の方がはかどるとの回答は73.3%に上った。
そんな流れに異を唱えるのは、NRI未来創発センター主席コンサルタントの中島済さん(56)だ。同センター上級コンサルタントの武田佳奈さんとともに7月13日、テレワークについて「緊急事態宣言時の経験で見切りをつけるな」と題する提言を発表。緊急事態宣言下のテレワークは「新型コロナで家族がみな同時に家庭内にいるなどの特別な状況下で導入されたことを認識すべきであり、この期間のパフォーマンスだけでテレワークの有効性を評価すべきではない」と検証の必要性を強調する。
テレワークは平時であれば生産性を上げ、離職率を下げるという欧米の研究結果もある。米スタンフォード大学のニコラス・ブルーム教授が2015年に中国企業で9カ月間、1千人の従業員を対象に行った実験によると、テレワークの導入により仕事のパフォーマンスが13%向上し、同時に退職率は半減する成果が出たという。