コロナ禍で在宅勤務が進み、部下とのコミュニケーションが一層取りにくくなった。上司世代の中には、部下をどう育てたらいいのか、彼らにどうやったら能動的に取り組んでもらえるのか、頭を抱えている人も多い。経営・組織戦略コンサルタントの西野一輝氏が、自身の著書『モチベーション下げマンとの戦い方』から一部を抜粋・再構成して「部下の新しい動かし方」を紹介する。
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■ いつでも見守っている姿勢を示す
リモートワークが進む中、「自分のことを温かく見守ってくれていると感じれば、モチベーションが上がりやすい」と話してくれた若手社員がいました。
つまり彼らは、傍らで見ていてくれる――いまどきの言葉でいえば、スクール形式ではなく個別指導型で仕事に関わってほしいと願っています。個別指導型の指導を学生時代に受けてきた影響もあるのかもしれません。私はチアアップ型の指導と呼んでいますが、「頑張れ」と横で伴走する姿勢を見せることがとても重要なのです。
最近は、大学生を指導する運動部の監督の育成法が変わり、「俺についてこい」ではなく「いつでも手を差し伸べるから」と近くで見守っている姿勢を示さないと、選手の気持ちが折れてしまうケースが増えていると聞きます。
大学のアメフトチームを監督している知人がいますが、最近は4年生になると多くの選手にキャプテンだけでなく副キャプテン、ディフェンスリーダーと肩書きを付与するといいます。
すると、肩書きのある選手が集まり、何事も合議制で決めたがるようになります。にもかかわらず、「監督は決定のプロセスを見ていてほしい。そして共同責任者であってほしい」と頼まれるとのこと。いまどきの言い方をするならフォロワーシップを求めているのでしょう。
学生自らが受け身ではなく能動的・自律的に考え行動するのを見守るという立ち位置は、これまでの学生スポーツにおける指導者とは対極かもしれません。ただ、こうした願望が社会人になっても根っこには潜んでいるのです。
つまり、すべて任せてほしいわけでもなく、「手取り足取り何から何まで教えてやるから、そのとおりにしなさい」でもなく、「自分で考えて、いろいろと仕事に対する取り組みをやってみてください。困ったときには、いつでも声をかけられる距離にいます」という状態を望んでいるのです。