まだ34歳。子ども一人、双子を宿した身重の妻、彼同様コロナウイルスに感染し治療中の両親を残して世を去った。かくのごとき惨劇は、とがった氷柱が心臓を刺し貫くように私に痛みを与え、自分がばらばらになるような感覚を与え、この身が中国人全体の一部であることに深い慚愧の念を抱かせた。

「本日DNA検査の結果が陽性と判明。もやもやは晴れた。とうとう診断が確定した」――これは李文亮医師が2月1日に書き込んだ微博のメッセージであり、あろうことか人生最後のメッセージとなったものだ。

 どうして診断確定からわずか5日で世を去らねばならなかったのか? 若い世代は免疫力が強く治癒率が高いのではなかったか? それより上の世代でも少なからぬ感染者が治癒し退院しているのではないのか? どうして自身医師たるものが十分な医療資源を得られなかったのか? 適切な治療を十分に受けられずあっという間に生を終えねばならなかったのか?

■8人の「内部通報者」

 私はむしろ疑念を持ち始めた。李医師は治療の過程で不当に扱われたのではないか、と。李医師は1月12日の時点ですでに発熱のため入院していたからだ。と同時に、こうも考えた。李医師は訓戒処分を受けた8人の「内部通報者」の一人で、マスコミとネットユーザーの関心を集める身、全国的な注目を集める時の人であるから、ひとたびコロナウイルス新型肺炎と診断されれば体制にとっては大きな恥辱となる。病状を意図的に隠そうとする姦計も生まれるのではないか? もしそうなら、李医師は謀殺されたことになる!

「大局こそ重要」の考えに慣れきった体制を目の当たりにするとき、彼らは個人の犠牲の上に社会の安定を粉飾するのだと考えても私はいささかも暗い気持ちにならない。彼らは国の安定的な統治を維持するためとして後ろ暗い事に手を染めたことがある。過去も現在も、そして未来も。

 続いて起きた出来事は、私の猜疑を証明できないまでも、彼らの邪悪さを証明することになった。

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「私はデマだと思った」