出会うべくして出会った同志、ともいうべきか。だが男と女であるがゆえ、世間の耳目を集めることにもなった。記者会見を開いて二人の関係を公表し、さらに次に進むことを選んだ。

「ものをつくるために集まったのだから、やるべきことをちゃんとやらないとおかしい、と思っているだけなんですけどね。つくるものに関して、絶対に手を抜きたくないし。どんな人間も、見る角度によって違う面を持っている。ただ最初から我々を信用に足らないとか、共感できない、という人はおそらくいないと思うんです。だから今回も『ソワレ』という作品に、大勢の人がのってくれた。我々はそれを受け止めて、誠実に創作を進める。それが一番大切なことなんです」

 最近はSNSで社会や政治について、さまざまな疑問もつぶやいている。

「疑問に思ったことを発言する、すごくシンプルなことですよね。日本では俳優がそれをするのは歓迎されない、みたいな風潮があったけど、そんなこと誰が決めたんだろう?って。特にコロナ禍で驚くほどに『え?』ということが見えてきましたからね」

 若いころは自分の仕事に精いっぱいで見えていなかったことが、年を重ねて見えてきた。

「小泉さんも同じだと思いますよ。道を歩いていて何かが倒れているのに、素知らぬ顔して通り過ぎることは、もうできない。声を大にしてやろう、と思っているわけじゃないけれど、『あ、自転車が倒れているのか。どれ、一応、起こしとこうかな』くらいの気持ちです」

(文・中村千晶)

豊原功補(とよはら・こうすけ)/1965年、東京都生まれ。82年から俳優活動を始め、青山真治監督「WiLd LIFe」(97年)、阪本順治監督「亡国のイージス」(2005年)など数々の映画、ドラマに出演。07年、和田秀樹監督の「受験のシンデレラ」で第5回モナコ国際映画祭最優秀男優賞を受賞。17年舞台「芝居噺『名人長二』」で、企画/脚本/演出/主演を果たし、以降「またここか」(18年)、「芝居噺弐席目『後家安とその妹』」(19年)と発表を続ける。18年「新世界合同会社」を設立し、外山文治監督の映画「ソワレ」を初プロデュースした

週刊朝日  2020年9月11日号より抜粋