バリアフリーを考慮した駅舎が新築された飯田橋駅西口(写真/高橋徹)
バリアフリーを考慮した駅舎が新築された飯田橋駅西口(写真/高橋徹)
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市ケ谷寄りの直線に移設された飯田橋駅の新ホーム(写真/高橋徹)
市ケ谷寄りの直線に移設された飯田橋駅の新ホーム(写真/高橋徹)
従来のカーブしていたホームは、柵を設けて東口からの通路となっている。旧ホームを西行きの列車が通り過ぎる(写真/高橋徹)
従来のカーブしていたホームは、柵を設けて東口からの通路となっている。旧ホームを西行きの列車が通り過ぎる(写真/高橋徹)

 JR東日本中央本線(中央・総武各駅停車)の飯田橋駅が、2020年7月11日から新ホームに移設。西口駅舎も改築され、装いを新たにした。都市開発後、土地が少ない都心の駅において、ホームの移設は至難の業である。なぜホームの移設が可能になったのか、さらに都道405号線(外堀通り)名物の風物詩も楽しめる新ホームの見どころなどをご紹介しよう。

【写真】転落事故が起きるほどだったカーブを描くホームがいまや

■交通の結節点に発展した飯田橋駅

 飯田橋駅は鉄道省時代の1928年11月15日に開業。戦後、国鉄、JR東日本と引き継がれ、現在に至る。また、営団地下鉄(現・東京メトロ)東西線、有楽町線、南北線、東京都交通局の都営大江戸線が順次開業した。線路がつながっていないとはいえ、鉄道網が放射状に広がり、首都交通の結節点に発展した。しかも、JR線の各駅停車しか停まらない駅で、4つの路線に乗り換えられるのは、稀有である。

 JR東日本のホームは、半径300メートルのカーブ上、高架から地平にまたがる位置に建設された。勾配も登り坂から下り坂に向かっている。隘路(あいろ)に設けられたため、列車とホームの間が開いている箇所、段差がある箇所もあり、乗り降りしにくい難点があった。そのため、注意喚起を促す回転灯の設置など転落防止策を施していたが、ホームから転落する事故が発生していた。

 そこでJR東日本は2014年7月2日、ホームの安全性を向上させる抜本的な対策として、ホームを約200メートル市ケ谷寄りに移設することを明らかにした。工事は2016年に着手。西口側に江戸城外堀跡の史跡が存在するため、工事は細心の注意が払われ、同年8月7日から西口駅舎が仮設地にて営業を開始した。

■ホームを移設できた2つの偶然

 飯田橋駅のホーム移設において画期的なのは、東口、西口とも駅舎を移転しないで実現したことである。これを可能にしたのは、2つの偶然が重なったことによる。

 1つ目は旧西口駅舎の構造。改札口からホームに直結するスロープ(約100メートル)の通路幅がホーム幅と同じなのだ。島式ホームの場合、ホーム付近まで複線の下り線と上り線の間隔が狭いのが一般的だが、飯田橋駅は旧西口の構造が幸いした。

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市ヶ谷寄りには土地に余裕が