2つ目は、かつて市ケ谷寄りに列車の折り返し用に使われる引上線が設置されていたため、土地に余裕があったこと。複々線のうち緩行線(各駅停車が走行)の線路は、かつては下り線、引上線、上り線の順に配されていて、引上線撤去後も下り線と上り線の間隔が変わらなかった。
旧西口駅舎の解体工事後、開業時から使われているホームの隣で、新ホームと西口新駅舎の建設工事に着手した。このほか、信号機の移設も行われ、2020年7月12日から西口新駅舎および新ホームの供用を開始した。
■西口新駅舎と新ホームの見どころ
西口新駅舎は2階建てで、庶民的なつくりの旧駅舎に対し、新駅舎は威風堂々とした構えで、史跡に調和したデザインに映る。中へ入ると、みどりの窓口が東口から西口に移設された。西口周辺はビルが立ち並ぶオフィス街と化しているほか、神楽坂が近いこと、法政大学の最寄り駅のひとつ(飯田橋~市ケ谷の中間に所在する)ということもあり、東口よりも人が多い。
小規模店舗は改札外にNewDays(JR東日本のコンビニ)とベーカリーショップ、改札内におにぎり屋を構えており、鉄道利用以外でもこの駅を利用する人が増えそうだ。
注目はホームの市ケ谷寄り先端(10号車のりば)だ。お濠(ほり)を隔てたところに都道405号線(外堀通り)があり、春になると桜の花が満開に咲き誇る。ホームで“プチお花見”ができるので、一旦各駅停車を降りて、次の列車までしばらく眺めたくなるような気分にさせてくれるだろう。
一方、旧ホームは市ケ谷寄り5両分が安全柵を設置のうえ、東口への連絡通路として活用されている。原則右側通行で、乗客はただひたすら歩く。東口から新ホームへは約3分を要するが、安全性は大きく増した。
旧ホーム時代に飯田橋で降りる乗客は、東口の階段付近で停まる3~5号車、西口スロープ付近で停まる10号車に集中していた。移転後は東口への連絡通路と西口の階段付近で停車する1・2・5・6号車に集中しているだろう。