◆TPP 安全網とセットで自由貿易を進める

 環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への参加は、菅首相が消費税の増税と並ぶ政権浮揚の鍵と位置づける重要な政策だ。1月14日、内閣改造後の初閣議でも、

「本年を『平成の開国元年』と捉え、貿易自由化や農業再生などにより日本人全体が世界に向かって活躍することを目指す」との基本方針を決定している。

 これに対し、党内では小沢系の議員を中心に、国内の農業への打撃を心配する声が強まっているが、実は小沢氏はTPPへの参加そのものには前向きだ。

「自由貿易によって一番利益を得るのは日本です。だから、考え方は賛成です」(「ニコニコ生放送」10年11月3日)

 しかし、無防備な貿易自由化には反対しており、

 「セーフティーネットをきちんとしないうちに全部オープンにしちゃったら、それはもうゴチャゴチャになってしまいます。まったく無防備に、ただ賛成っていうのは、いけないと思います」(同前)と懸念も示している。

 つまり、貿易の自由化は安全網の整備とセットで進めるべきだというのが、小沢氏の考え方なのだ。

 小沢氏が言うセーフティーネットの柱は、農畜産物の販売価格と生産費の差額を販売農家に直接交付する「戸別所得補償制度」だ。すでに10年度からコメを対象に始まっており、初年度は5618億円の予算が計上された。

 ただ、党が09年衆院選などで掲げた公約を完全に実現するには、年1兆円の予算が必要だとされる。

 「政治主導」によるさらに踏み込んだ決断をするかどうか。菅政権の本気度が問われている。

◆地域主権 ひも付きやめれば地方は活性化する

 民主党は政権交代当初、地域主権改革を「改革の一丁目一番地」に掲げていた。だが、もはや風前の灯だ。

 菅首相は昨年12月16日、地域主権戦略会議で、

「いっぺんに頂上までは行かないまでも、しっかり取り組む」

と話したが、原則廃止のはずだった国の出先機関改革が当面先送りされるなど、中央省庁の抵抗は強烈だ。

 地域主権に関する小沢氏の主張は明確である。

「国の『ひも付き補助金』を改めて一括交付金にすること。地方で自由に使えるカネが増えれば必ず活性化する」(「週刊朝日」10年9月17日号)

「民主党の調査でも、首長さんたちは自由に使えるお金ならば、今の補助金のトータルの7割で、今以上の仕事を十分やれるという答えが出ております。地方に落ちるカネは表面上は減りますけれども、実質的には増えるということです」(10年9月2日の民主党代表選の公開討論会)

 地方に財源を移譲すれば、ムダが削減されて実質的に新たな財源が生まれるというわけだ。

 

皇室・靖国 女性の皇位継承も一向に差し支えず

 小沢氏は、かねて女性天皇を容認している。

 雅子さま愛子さまを出産し、皇室典範の改正論が高まった01年12月の会見では、こう指摘している。

「女性の皇位継承者ということも一向に差し支えない。日本では何度も女性の天皇陛下というのはあった。男系の男子に限ったのは明治になって皇室典範を作ってからだ」

 昨年の代表選に向けての会見でも、

 「男系の男性、直系の男性に限る必要はないのではないか」(10年9月8日)

と語っている。

 一方、靖国問題では小沢氏は「分祀論者」である。

「靖国神社は、戦争でお国のために亡くなった人をまつっているところだと思います。そして、いわゆるA級戦犯と呼ばれる方は、戦争そのものの行為で亡くなったわけではない。合祀される以前には、天皇陛下もきちんと靖国神社をお参りしておりましたし、総理を始めみなさんも確か参拝しておられたんじゃないでしょうか」(同前)

 分祀をして、靖国神社を誰でも参拝できる「本来」の姿に戻すべきだという主張だ。

 *  *  *

 小沢氏のさまざまな政策論の背景にあるのは、政権交代可能な二大政党制を定着させることが、この国の民主政治の発展にとって不可欠だという信仰にも似た確信だろう。

「(歴史的な政権交代という)この試みが失敗すると、半永久的に日本に民主主義は定着しない。僕はそれを本気で心配している。民主党が政権を与えられたということは、歴史的に大変な役割を背負ったんだと思うんです。これを成功させなきゃいかんですよ」(「週刊朝日」10年9月17日号)

 昨年末に本誌で小沢氏と対談した脳科学者の茂木健一郎氏は、「プリンシプル(原理・原則)の人」と評した。強制起訴を覚悟した「剛腕」の言動から、まだまだ目が離せない。

週刊朝日

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