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 昨今のマーケティングにかかわる間違った常識を豊富な事例に基づくエビデンスで、ばっさり斬ってくれる本、『ブランディングの科学 [新市場開拓篇] エビデンスに基づいたブランド成長の新法則』が話題を呼んでいます。

「たとえば、『市場シェアが大きい方が圧倒的に優位』という証明。少し考えれば当たり前のことなのですが、最近シェアを追わないブランドがたくさんある中で、改めてその正しさを思い出させてくれます」

 そう話すのは、日本マクドナルドの業績V字回復を牽引し、「ポケモンGO」などを開発・配信する米ナイアンティックのシニアディレクターを経て、10月1日からファミリーマートの初代CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)に就任する、日本を代表するマーケターの足立光さんです。

 前作、『ブランディングの科学 誰も知らないマーケティングの法則11』と同様に、マーケターたちから高い支持を受ける同書を、どう読み解けばいいか。足立さんに聞きました。

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 この本は市場シェア以外にも、例えば「今のユーザーに満足してもらい、ヘビーユーザーを増やすような、ロイヤルティー・プログラムさえやっていれば収益は上がる」という間違った認識も正してくれます。かつ「既存の重要顧客にフォーカスしていればいい(新規顧客獲得より、既存顧客の維持を優先すべき)」という認識も間違っていると明確に証明してます。

 私も今年1月に上梓した共著『世界的優良企業の実例に学ぶ 「あなたの知らない」マーケティング大原則』の中で、顧客を「知っている・知らない」「使ったことがある・ない」「現在の使用頻度」「次回の購入・使用意向」によって分類する手法「9セグメント」を紹介しました。そしてライトユーザー、とりわけ「消極離反顧客」「消極認知・未購買顧客」「未認知顧客」に対して、継続して訴求することの重要性を強調しました。

 たとえば、多くのオンライン・ゲーム会社はほとんど既存ユーザーしか見ていません。いかにその人たちに楽しんでもらい、たくさんお金を使ってもらうかという施策を繰り返しています。これ自体は悪いことではありません。しかし、必要なのはそれだけではなくて、常に新しいユーザーを獲得し続けることです。既存顧客の声を聞いて、そこに響く施策を打つだけではなく、ライトユーザーやノンユーザーに対しても、きちんと声を聞き、響くような施策(既存顧客への打ち手とは違うかもしれません)を考えて訴求し続けないと、中期的に売上や収益は安定しないのです。

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「自分のブランドのユーザーは特別ではない」