落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「謎解き」。
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ミステリー小説や映画の『謎解き』モノが苦手。まず、登場人物名や団体名などの固有名詞が覚えられない。特に外国のものなどはみんなカタカナでアタマに入ってこない。
密室での事件を取り扱ったものなどは、建物の間取りや特徴などがかなり重要な要素だが、それらをイメージして読み進めていくのがホントにダメ。なんども巻頭の登場人物一覧や山小屋(仮)の平面図を振り返りながらページをめくっていると「あー! めんどくさっ!」となって、連続殺人なら2人目が殺される前に「もーいー! どーせたくさん死ぬんだろ!!」と逆ギレしてリタイア。物覚えが悪くて堪え性が無い。ようは『謎解き』モノに向いていない。
読みながらどうにも行き詰まってくると、ぶっちゃけ「どうせ作り話なんだから犯人はだれでもいいじゃないか!!」と、また逆ギレ。作り手に申し訳ないから、私みたいなやつは『謎解き』は読まないほうがお互いのためである。ゴメンなさい。
最初から犯人が分かってるミステリー、例えば「刑事コロンボ」とか「古畑任三郎」とか。「あ、こいつが犯人なんだな。あー、これからそのネタ明かしをしていくのねー」というようなタイプの『答え合わせの謎解き』系。それならまだついていけるのだけど。
小学生のとき。友人のA君が貸してくれたファミコンの『ポートピア連続殺人事件』。A君は「カセットの裏面は見ないでね。兄ちゃんに落書きされちゃってさ」とカセットを渡してくれました。「なんのことやら?」と思いつつ、ソフトをファミコン本体に差し込んでスイッチを入れても映らない。そういうときはとりあえず吹く。そう、吹いてホコリを飛ばすのです。本体の差し込み口を吹いてから、ソフトの読み取り部分を吹こうと顔に近づけると、カセット裏面のラベルにでっかく油性マジックで【犯人はヤス】としてありました。