物語を作りたいという願望は小学生の頃から持っていた。高校時代はヘルマン・ヘッセなど世界の名作を読み、三島由紀夫を愛読してきた。小説と美術作品では入れられる情報量が違うという。

「美術作品は要素を詰め込むと印象が弱くなってしまう。真ん中に一本のあぜ道を描いた絵のように、ひと目でわかって見る人が勝手に想像を膨らませるほうがいい。情報は入れすぎないほうがいいんです。それに比べて小説はいろんな要素をいっぱい盛り込めます」

 それで今回は言葉で人間ドラマを描いた。二朗は合格できるのか。美術界を知り尽くした会田さんならではの小説だ。(仲宇佐ゆり)

会田誠(あいだ・まこと)/美術家。1965年、新潟県生まれ。91年、東京藝術大学大学院美術研究科修了。絵画、写真、映像、立体、パフォーマンスなどで表現活動。小説に『青春と変態』、エッセイに『カリコリせんとや生まれけむ』など

週刊朝日  2020年9月25日号