新型コロナウイルスの感染拡大で企業や家庭の台所事情が苦しくなるなか、菅義偉・新政権が誕生した。アベノミクスを引き継ぐとしながらも「デジタル庁」創設や地銀再編、携帯電話料金の値下げなどに意欲を示す。期待と不安がまじり合う“スガノミクス”で暮らしはよくなるのか?
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菅政権がまず向き合わなければならないのは、新型コロナの対応と経済立て直しの“両立”だ。
とくに部品や技術を大企業に提供するなど、産業界を支えてきた中小企業。日本経済のイノベーションや成長の源泉といえる存在が、まさに新型コロナで体力をそがれ、死活問題となっている。
菅氏はこうした状況を打破する成長戦略を描けるのか。ニッセイ基礎研究所上席エコノミストの上野剛志さんは次のように語る。
「安倍晋三政権の継承を掲げ、アベノミクスの1本目、2本目の矢である金融緩和策と大規模な財政出動を続ける考えですが、いずれも追加の政策を打ち出す余地は限られています。双方とも一時的に成長を押し上げる“カンフル剤”的な位置づけで、3本目の矢である成長戦略は力不足のまま。構造改革や規制改革で経済の地力を高められるかがカギになります」
構造改革や規制改革をどこまで実行できるのか、トップの手腕が問われている。
菅氏は9月14日、自民党の新総裁に選ばれると「役所の縦割り、既得権益、あしき前例主義を打破して規制改革を進めていく」と強調した。コロナ対策の給付金支給が遅れるなど省庁間の連携不足が浮き彫りとなったこともあり、各省の政策を一元化する「デジタル庁」の創設に向けて「法改正へ早速準備したい」と意欲を示した。