田原:では自助はいらない? 自分で頑張る必要はないと。

志位:そうは言っていません。政治が押し付けることではないということです。たとえば、これまで自助の押し付けで医療費を削ってきました。病院経営が逼迫(ひっぱく)しています。さらに医者の数を抑えてきた。OECD(経済協力開発機構)加盟国の平均に比べて14万人も少ない。

田原:合理化のために保健所もどんどん減らした。

志位:新自由主義の弊害ですよ。公にやる仕事を減らした結果、医療も公衆衛生もすべて脆弱(ぜいじゃく)にしてしまったわけです。

田原:雇用問題もある。今や非正規社員は4割だ。

志位:労働法制の規制を何もかも緩和したからです。もう一度、ルールをきちんと作り、非正規労働は一時的な労働に限定して、正社員を当たり前にしていかないといけません。

田原:政府の立場からすれば、あまりにも財政事情がよくない。先進国の中で最悪だ。

志位:今の国の財政システムに無駄はないのか、という問題はあると思いますよ。

田原:どこに無駄がある?

志位:軍事費一つとっても、トランプ政権に言われるままに高額の武器を買ったり、思いやり予算をポンと出したり。米軍の駐留経費の負担割合は、世界で日本が最も高い。

田原:75%だ。

志位:こんな国はないんです。こんなに出していること自体がおかしい。

田原:前大統領補佐官のボルトンによれば、トランプは今の4倍の額を要求してくるだろうと。

志位:突っぱねなきゃだめですよ。

田原:日米関係で言えば沖縄問題。日米地位協定を改定しないといけない。去年の春、安倍さんに改定しろと言ったら「する」と言った。

志位:言ったの?

田原:言った。改定は自民党も反対ではないんだから、野党はもっと訴えなきゃ。

志位:日米地位協定の抜本改定は野党の共通要求ですよ。日本の地位協定は本当に異常で、占領時の米国の絶対的な特権をそのまま引き継いでいる。米軍が日本国内のどこで演習をしても自由。こんな国ないですよ。そういう問題も含めて、野党間でかなりの点で、一致点が広がっています。

田原:少なくとも安倍さんがやると言っているんだから、志位さんたちが自民党に言えば、菅さんもノーとは絶対言えない。

志位:やってみますよ。ただ、これも何も政権を取らなければだめだと思っています。新自由主義からの転換、日米関係を対等・平等にする、立憲主義を取り戻す。この三つの大きな柱を実現する。そのためには、次の総選挙で「政権を取る」とはっきり宣言すべきだと思っています。

田原:あとは国民に野党は政権を取るという気力を示すこと。僕は絶対、連立政権を作ってほしい。

志位:早くその方向に持っていきたいと思っています。

田原:頑張ってください。

(構成/本誌・秦正理)

週刊朝日  2020年10月9日号より抜粋