閣議前に言葉を交わす菅義偉首相(左)と麻生太郎副総理兼財務相=2020年9月29日午前 (c)朝日新聞社
閣議前に言葉を交わす菅義偉首相(左)と麻生太郎副総理兼財務相=2020年9月29日午前 (c)朝日新聞社

「安倍路線」を継承するとして誕生した菅義偉内閣。金融緩和、財政出動、成長戦略を柱とするアベノミクスについても「継承し、さらなる改革を進める」との考えを示す。

 日本財政や将来年金の末路を100以上のデータをもとに徹底検証した『キリギリスの年金 統計が示す私たちの現実』(朝日新書)で、アベノミクスの「異次元の金融緩和」の危うさに繰り返し警鐘を鳴らす弁護士の明石順平氏が特別に寄稿した。

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 異次元の金融緩和とは、日銀が民間銀行等から大量に国債を購入し、お金を大量供給することです。ピーク時において、年80兆円のペースでマネタリーベースが増加するよう買入をしてきました。

 マネタリーベースというのは日銀が直接供給するお金のことで、現金通貨(紙幣と硬貨)と日銀当座預金(民間銀行が日銀に預けているお金)を合わせたものです。「お金の素」と考えればよいでしょう。対GDP比で言うと、2019年の時点で、日銀はアメリカの4倍以上の規模でマネタリーベースを増やしています。

 なぜこのような極端なことをするのか。それは、「物価が上がるぞ」と思わせて、「実質金利」を下げるためです。

 金利はお金のレンタル料です。そして、見た目そのままの金利を「名目金利」といいます。これに対し、予想物価上昇率を加味して算出する金利を「実質金利」といいます。名目金利から予想物価上昇率を差し引いた値が実質金利です。

 金利を下げれば、返済負担が軽くなりますから、借金がしやすくなります。したがって、銀行等金融機関からの貸出しが増えます。ここで、銀行等が貸出しの際にどういうことをしているのか具体的に考えてみましょう。

 まず、銀行は貸出先に、自行の口座を作らせます。例えば、1000万円を貸す場合は、その口座に1000万円入れたという預金記録を作ります。つまり、お金を貸すというのは、預金記録を作るということであり、貸せば貸すほど預金が増えていくということです。そして、この預金は振込決済等、通貨と同じ役割を果たすので、「預金通貨」などと呼ばれます。

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