資産の多い少ないに関係なく勃発する「遺産問題」。遺言書があってもトラブルが起こるケースもある。もし「ペットに財産を譲る」とあったら、どうすればいいのか? また、そう思っている人はどうすればいいのか?
動物は法律上、「物」として扱われるので、権利の主体にはなれない。よって遺言書の「ペットに〜」という部分は無効となり、被相続人がペットに譲ろうとした財産については、相続人の間で分け方を決めることになる。
そこで行政書士の竹内豊さんが提案するのは、次のような方法だ。
「自分の死後にペットの世話をしてくれそうな人に、『世話をしてくれることを条件に財産を譲る』という遺言書を残す方法があります。その場合も、世話をするように求められた人が申し出を断らないように、遺言を残す前にしっかりと根回しをして了解を得るようにしましょう」
こんなケースはどうだろう。遺言に「財産はすべて愛人に」とあったら……。
不倫は公序良俗に反する行為だが、この希望は全面的に否定されるわけではなく、具体的な事情を考慮して総合的に判断される。
竹内さんが解説する。
「6年間、妻と別居し、ほかの女性と暮らしていた男性が、『不倫相手に財産を残す』とした遺言を最高裁が有効と判断した例があります。相続人の妻、長女、不倫相手の女性にそれぞれ3分の1ずつ残すというものでした。夫婦関係が破綻しており、専ら生計を被相続人に頼ってきた不倫相手の生活を守る目的の遺言であること、妻と長女の生活基盤を脅かすものでないことを考慮しての判決でした」
ただ、「すべてを愛人に」という今回のケースは、遺留分の問題もあり、実現は難しいと考えられる。
※週刊朝日 2013年1月25日号