1月中に訪米予定だった安倍晋三首相が、予定をASEAN外遊に変更した。日程的な問題による変更だったが、この外遊の意味をジャーナリストの田原総一朗氏はこう話す。

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 この外遊には大きな意味がある。ASEANの総人口は6億人を超え、約5億人の欧州連合(EU)より多い。日本にとってきわめて有望な市場だ。

 アメリカが中心になって推し進めている環太平洋経済連携協定(TPP)は、アメリカによる対中国包囲網である。ASEANと日本を取り込むことで、台頭する中国を抑え込もうとしている。

 一方、中国はASEANに日中韓、インド、豪州、ニュージーランドを加えた東アジア16カ国の包括的経済連携協定(RCEP)という枠組みでTPPに対抗しようと考えている。

 だから、日本がASEANとの関係を深め、連帯を強めることは、アメリカに対しても中国に対しても発言力を強めることになる。

 ASEANの中でも特に親日国である人口約2億4千万人のインドネシアは、日本にとって安心感のある拠点となりうる。

 実はいま、日本のアイドルグループAKB48のジャカルタ版である「JKT48」が人気を呼んでいる。ASEANでは、韓国のドラマやK-POPが圧倒的な人気で、文化戦略では韓国が大成功していた。ところが、JKT48もじわじわと浸透し、連日超満員のインドネシアの劇場では、同国の若者たちが「超絶カワイイ」「アンコールイクゾー」などと日本語で応援している。仲川遥香、高城亜樹などAKB48から移籍したメンバーも現地に溶け込んでいる。

 この奇跡的な大成功を日本政府はどう捉えているのだろうか。

週刊朝日 2013年1月25日号