ところが野田聖子議員からは日程調整ができないことを理由に受け取りの辞退の連絡がきた。「日程調整してほしい」と再度お願いしたところ、10月9日に正式に「党として受け取れない」という連絡がきた。野田議員としては、杉田議員の発言は看過できるものではなく、事実確認を行い下村政調会長に相談をして聞き取りをお願いした、その後に杉田議員は謝罪している、辞職は議員本人が判断すべきこと、だから野田議員が署名を受け取ることはできない、党としてもできないという内容だった。また署名は受け取らないが面談の日程調整は考えると記されていた。

 野田議員はあらためてメディアに向かって「“辞職”と書かれている以上、受け取れない」と言っているが、だったら最初からそう言えばいい。10日以上「署名受け取りの日程調整します」と言い続け、こんな結果はあるだろうか。

 「戦争しないとどうしようもない」「女を買いたい」といった発言が問題になった丸山穂高議員がいまだに国会議員でいられるように、どんな暴言をはいても、公文書を隠蔽しても、国会議員は周りが辞めさせられるものではないという。とはいえこのような暴言を許してきた党としての責任、こういう議員を立候補させる党の責任を考えてほしい。なにより日を追うごとに「あの発言で死ねと、国に言われたような気持ちになりました」という被害当事者の声が届く。ワンストップセンターに助けられた実体験をつづるメールが届く。事件後、長いトラウマに苦しみ、そのために就学も就職もままならず、治療に膨大な時間とお金がかかる人生。そういう人生を強いられた被害者たちの苦痛が、抗議には込められているのだ。

 10月13日、10時30分に自民党本部に署名を届けに行った。13万6400人の署名を朝早く起きて印刷をしたところ 2770枚、高さ約30cm、両腕にずしりとくる重さは10キロ以上だ。人の声を届けるという仕事、まさにこれは本当の重荷、重責、という気持ちで生まれて初めて自民党本部に向かった。

 結論を言うと、自民党には署名を受け取ってもらえなかった。というか門前払いだった。自民党職員でビルの管理の担当をしている男性が出てきて「アポがないと受け取れない」を繰り返すのみ。そもそもアポを取ってもらえないから渡しに来たというのに。署名、ここに置いていっていいですか? と聞くと「落とし物として警察に渡します」という。そこで、人権侵害発言を繰り返す杉田氏を今後は候補者にしないなどの措置をとってほしいと記した要望書を、その職員に渡した。

 風呂敷に包まれた署名はひとまず私の事務所に戻った。汗だくで風呂敷抱えてもどってきた私に、一緒に印刷を手伝ってくれたスタッフが本当に驚いた顔で「そんなことってありますか?!」「民の声を聞かないのか!?」と叫んだ。文字通り突き返された声の束を前に、呆然とする思いだ。

 女性をたたくことで自民党内での地位を確立してきた杉田水脈議員と、そんな杉田議員を苦々しく思いながらも党を守るために必死の野田議員。そしてそんな自民党の女性議員たちの姿に苦しむ私たち。登場人物はなぜか全員女性で、本当の責任者の顔がいつもみえない。

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表

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