体罰を行ったバスケットボール部の顧問教諭は、1994年4月から18年以上、桜宮高校に在籍。教え子の卒業生2人を副顧問にするなどし、独裁体制を築いていった(撮影/楠本涼)
体罰を行ったバスケットボール部の顧問教諭は、1994年4月から18年以上、桜宮高校に在籍。教え子の卒業生2人を副顧問にするなどし、独裁体制を築いていった(撮影/楠本涼)

 大阪市立桜宮高校で昨年12月、バスケットボール部の主将だった男子生徒が自殺した。部の顧問の男性教諭(47)が、男子生徒に体罰を与えた翌日のできごとだったため、この後「体罰」に関して大きく物議をかもすことになった。

 部活動における体罰には、極めて特殊な事情もある。体罰肯定の指導者・教諭が多いから体罰が横行するという単純な図式ではない。

 高校の部活動での体罰の背景には、勝利至上主義以外の要素も浮かび上がる。

 全国大会に出場する。その成果を携え、スポーツの成績などを重視するAO入試、推薦入試で、有名大学へ進学する──。

 スポーツライターの生島淳氏によると、そのルートは、すでに確立しているという。

東大秋入学の落とし穴』という著書もある精神科医の和田秀樹氏は、この入試制度が抱える構造的な問題点を指摘する。

「アメリカなどの海外の大学では、AO入試の場合、SAT(大学進学適性試験)の点数など客観的な指標を求める。日本では、高校の成績である評定平均、高校の推薦書など、基準が不明確なものが合否基準になる」

 となると、生徒らは常に高校の教諭、指導者らの顔色をうかがう。その上で、唯一の指標である部活動では、何があっても「成果」が出るまで、踏ん張り続けなければならず、やめることは許されない。

 バスケットボールやバレーボールはルール上、体罰が起きやすいという指摘もある。生島氏が解説する。

サッカーやラグビーは、高校生の試合でも原則的にハーフは30分以上あり、その間は選手だけでプレーしなければならない。一方、バスケットやバレーは、試合中でも、監督は指示を与えるためタイムアウトという時間を取ることができる。あくまでルール上は『指示』ですが、好き勝手に振る舞える時間と勘違いする監督もいる。試合で自由にできるなら練習でも、となるのは自然の流れ」

AERA 2013年1月28日号