
大阪都構想をめぐり、大きく揺れる大阪府。住民投票に関しては公明が賛成、自民が反対のねじれの構図になるなど、国政に影響を及ぼしながらも熱戦を展開している。念願の都構想の実現に向け、日本維新の会は“最終手段”にも打って出た。AERA 2020年11月2日号では、都構想をめぐる各党の裏事情に迫った。
【写真】松井市長のバックにいると言われるのが、この大物政治家
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一度決めてしまったら、二度と元に戻ることはできない究極の片道切符をめぐって、大阪が揺れている。
11月1日、大阪市を廃止して四つの特別区に分割するという「大阪市廃止・特別区設置住民投票」が行われる。日本維新の会にとって次期衆院選挙に向け、党勢拡大の命運がかかる絶対に負けられない戦だ。そこで、吉村洋文・大阪府知事と松井一郎・大阪市長が最終手段に打って出た。
その日、演説会場となったなんば高島屋前は、いつもとは違う異様な熱気に包まれていた。
「なっちゃーん! なっちゃーん!」
10月18日。人気タレントさながらの絶叫で出迎えられたのは、公明党の山口那津男代表。二重、三重の列を作り声援を送る中高年の女性たちは公明党の支持母体「創価学会婦人部」の面々だ。演説で山口氏はこう声を張り上げた。
「11月1日の住民投票は賛成の票を入れて欲しい。元大阪府民、現在は東京都葛飾区に住む山口那津男がお願いする」
■維新の聖地で並ぶ3人
大阪で「なんば高島屋前」と言えば、選挙遊説の定番であり、日本維新の会が選挙戦最終日の演説会場に選ぶ、いわば「維新の聖地」だ。そこに乗り付けられた公明党の街宣車。そして、山口代表の横に日本維新の会のツートップが並ぶ。この維新・公明の3人の「絵」こそ「松井・吉村」が画策した最終兵器だった。日本維新の会の関係者はこう証言する。
「コロナ禍への対応で連日、在阪メディアに露出し続けた吉村知事の人気も手伝って、賛成が10ポイント以上の差をつけリードしていました。しかし、投票日が近づいてくるにつれ反対が急増。最新の世論調査では僅差とまで言われています。この状況を打開するには、組織票しかない。自民党を敵に回している以上、期待できるのは公明党だけなんです」