今回はあまりに悪質だったから炎上したが、これまでもタカラトミーのツイートには、リカちゃんのパンツを並べて「ぱ!ん!つ!ぱ!ん!つ!」とはしゃぐ書き込みもあった。これは8月2日のツイートで、この日はパンツの日、と呼ばれているらしい。試しに「#パンツの日」で検索すると2次元ロリコンのツイートやエロ画像ばかりが上位にあがる。タカラトミーの中の人も、その文脈でリカちゃんのパンツをおふざけで紹介したことが分かる。おじさんの軽いエロ心はお遊びとして許されるとでも? リカちゃんのパンツに関するはしゃいだ書き込みはこれ以外にもあったが、これらはいまだに消えていないものもあり、 タカラトミー側は問題とは考えていないようだ。
またリプライも、リカちゃんに電話したら昨日何食べたか教えてくれた、リカちゃんはオジサンにも優しい……みたいなことを記していた。女の子を性の対象として見ることをいとわず、そのうえ女の子たちが遊ぶオモチャすら性的に搾取し、しかも女の子たちに癒やされようとしている。
どこまでゲスなのか。
タカラトミーは「表現について至らぬ点がございましたことを心より深くお詫び申し上げます。大変申し訳ございませんでした 」と定型っぽいおわびの文章を公表したが、不愉快な思いどころか、恐怖を感じた人、トラウマに苦しめられた人は少なくない。性暴力もセクハラも、「やる側」からすればほほ笑ましい日常や、冗談っぽい楽しい空気や、気軽なおふざけ気分で行われる。だから「やられた側」が騒ぐと「そう捉えるほうが、おかしい」と本当に驚かれたりするが、暴力的な空気の中で行われる差別や暴力より、楽しげな空気の中で行使される差別や暴力のほうが、ずっと身近なものだ。
リカちゃんで遊ぶような年頃の女の子にとって、リカちゃんは「お姉さん」だ。自分よりずっと年上のお姉さんの世界を空想の中で夢中で膨らませながら楽しむのだ。そのお姉さんが、こんなふうに扱われるのは本当に胸が痛い。小さい女の子にとっても、少し大きな女の子にとっても、ここは本当に安全な社会じゃない。
「少女」を過剰消費する日本。怒られたがったり、癒やされたがったり、同化したがったり……。そんな社会でリアルに生きる少女の言葉と人生、その安全と尊厳を守る力を取り戻したい。まずは私たちのリカちゃんに、謝れ。
■北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表