室井佑月・作家
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イラスト/小田原ドラゴン
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 作家の室井佑月氏は、費用の半分が国庫から支出された中曽根康弘元首相の葬儀に異議を唱える。

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 元首相の中曽根康弘氏の葬儀が10月17日に、内閣と自由民主党の合同葬儀として盛大に行われた。税金から約1億円、自民党からも約1億円、こっちにも原資には税金が含まれている。

 なぜこの時期に2回目の葬儀(去年亡くなったときにも行われた)? コロナで先行きが見えない人が多い中、なんでこんなに大金をかける?

 政府としては「やる」と決め、さらに強引に、内閣府は最高裁に弔旗の掲揚や黙祷(もくとう)による弔意表明の協力を依頼した。文部科学省も国立大学などに同様の通知を出した。

 三権分立の立場から最高裁は独立性が重んじられるし、大学だってそうだ。国立大学の運営にも税金が使われているし。

 政府はこれについてただの依頼だといっているが、依頼されたほうはかなりの圧を感じるだろう。政府は全国の裁判所や国立大学から、その力を剥ぎ取ろうと考えているんじゃないか。日本学術会議の6人の排除もそうだ。自分たちにものをいう人間が邪魔なのだ。

 ただし、さすがにこの時期の盛大な葬式は世間から反発を食らうと考えたのか、中曽根氏の葬儀のニュースは、そんなに大きくは扱われなかった。

 これもとてもおかしなことだ。中曽根氏の葬儀は、血税を注ぎ盛大に行った。秋篠宮ご夫妻が出席したのは知っているけど、海外やこの国の要人の誰に案内状を出し、出席した人、欠席した人などがもっとわかってもいい。この時期になんで2度目の葬儀を?と怪訝(けげん)に感じる納税者にとって、それは知る権利があるだろう。

 結局、盛大な中曽根氏の葬儀は、自民党の持つ大きな力をあたしたちに見せつけるためだったんじゃないかと思う。それは一部の人には脅しになるし、一部の人には愛国心の鼓舞となり、自民党への吸引力になる。

 解散総選挙は1年以内に必ずある。後者のウケを狙ってやったのだが、多くの人から反発を食らいそうな巷(ちまた)の空気をスレスレで察知し、マスコミに大げさな報道をさせなかったのだろう。いくつかの見せる場面を提供すると政府がいえば、マスコミは乗ったはずなのに。

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