作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、週末に反対多数で否決された大阪都構想について。政治家の発言に耳を疑ったという。
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政治家の発言で、「あれ?言い間違えてる?」「あれ?私、聞き違えた?」と思うことはときどき起きる。特に大阪維新の会の人の発言にはよく起きる。
週末の大阪都構想の住民投票の結果を受けて、松井一郎大阪市長が言ったこと。
「皆さんが悩みに悩むこと、これだけ大きな問題提起ができたことは政治家冥利に尽きる」
政治家冥利の使い方、間違っていないですか。政治家って、政治でなければ救えない人をしっかり救うのがお仕事のはず。市民を迷わせ分断させ、コロナ禍での強引な住民投票で人々の健康を危険にさらし、税金を大量投入して、「政治家冥利に尽きる」はないでしょう。
とはいえ、この言葉、松井さんオリジナルではなかった。5年前の都構想の住民投票の時に市長だった橋下さんも、松井さんと同じことを言っていた。
「税金を投入して、これまで多くの職員が僕に付き合ってくれてこうした結論になりましたが、政治家冥利に尽きる活動をさせてもらってありがたく思っています」
多分、これ、松井さんも橋下さんも「政治家冥利に尽きる」ではなく、税金たくさん使って、人をたくさん動かして、大阪市政が始まって以来のすげー大きいことやってやったぜオレ……という、感慨で出ちゃう男尊女卑死語「男冥利に尽きる」と言いたかったのではないでしょうか。
維新の人たちの話を聞いていると、ものすごいケチで、お金を管理するDV夫の支配下に置かれているような気分になる。DVは物理的な暴力だけではない。DV被害者の誰もが口をそろえて言うのは「誰が食わせてやっていると思っているんだ」という経済的に圧力をかけられる暴力。自分がいくら給与をもらっているかを妻に教えず、最低限の生活費だけを妻に渡し、妻のムダをいっさい許さない。ムダかどうかを決めるのはオレ。
経済DVを受けている知人の女性は、夫のパソコンの履歴をたまたま目にした時、ヤフー知恵袋で「嫁、無駄遣い」というワードで検索しているのを見て泣いたという。彼女はその前日に、結婚記念日に前から欲しかった茶器が欲しいと、勇気を振り絞って伝えていた。そんな夫と維新の振る舞い……似てますよね。