キャリアウーマンに成長した妹・愛美(橋本愛)は恋人を後輩に奪われて、飲んだくれては中森明菜を歌い号泣。

 うん、でもまだ遊川脚本の朝ドラ「純と愛」ほどじゃない。勤め先は寝タバコで燃えてないし、お母さん認知症になってないし、お父さん海に飛び込んで死んでないし、ヒロインの夫が脳腫瘍(しゅよう)で倒れることもない。

「純と愛」は最終回になっても、夫が目覚めなかったけど、こちらは初回で昏睡状態を解消しているのが朗報です。

 その35歳の少女を演じる柴咲コウがすごい。心の声は子役がやってるんだけど、そのまま柴咲のセリフになっても違和感のない声色。

 柴咲の外見のまま、わんわん泣いて、きゃっきゃはしゃいで、赤い風船を振り回し小学校の同級生・結人(坂口健太郎)と公園を歩けば、周囲のカップルは好奇の目でチラチラヒソヒソ。

 ああ、このいたたまれなさこそ、遊川ドラマよ。

 この先痛々しくも理不尽な出来事ばかり起きるに決まってる。でもね、めくっちゃうのよ、かさぶたを。血が出るってわかってるのにやってしまう心のかさぶたドラマ。

 どうか今回は綺麗(きれい)にはがれますように。

カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など

週刊朝日  2020年11月13日号

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