「所属する会社や役職ではなく、互いの人間性を吟味することから始まるのが『弱いつながり』の特徴だと思います。名刺交換から入らないほうがかえって重要な関係になります」
■「弱い」から強みになる
「弱いつながりの強み」という言葉がある。1973年にスタンフォード大学のマーク・グラノヴェッター教授が論文で発表した社会ネットワークの概念だ。
家族、職場の同僚、取引先の担当者といった生活環境や価値観が近かったり、社会的なつながりが強かったりする人たちよりも、趣味の仲間や「知人の知人」など社会的なつながりが弱い人間関係のほうが、有益な情報をもたらしてくれる可能性が高いという説だ。
「強いつながりの人はコミュニティーを共有していることが多く、同じような情報や考え方を持っているので画期的なアイデアを生み出す情報源になりにくい。自分のことをよく知る人のほうが良い人脈だと思っていたら、実は違うということです」
こう解説するのは、経営コンサルタントで地域おこし事業にも取り組む小山龍介さん(45)だ。リモートでは、現実の飲み会などよりも「弱いつながり」をつくりやすいという。
小山さんは6月、東洋大学の丁野朗客員教授らとともに、文化資源を活用して地域おこしを図る「ブンピカ会議」という勉強会を立ち上げた。交流の舞台はフェイスブックだ。共通のテーマでメンバーを集め情報交換できるグループ機能で首長を含む約200人で活動状況を共有しているほか、動画のトーク番組を毎月配信。クロストークで各地域のキーパーソンが実践例や課題を議論している。「地域限定だった情報もネット上だと幅広く共有できる」という。
一方で、リアルの重要性にも気づいたという。リモートでしか対話したことがない間柄の場合、番組出演交渉がうまく進まないケースが多かった。ネット上のみのつながりに対する不安や警戒心が人々の間に根強いことの表れと見られる。こうした経験も踏まえ、リアルで築いた信頼関係が土台にないにもかかわらずリモートでいきなりビジネスの話を持ち込むのはNGだとアドバイスする。
「最初からビジネスチャンスありきで考えるとお付き合いが打算的になるので、利害を絡めないことが重要です。信頼関係のない人同士のコミュニケーションは『take』(得る)ではなく、『give』(与える)から入るほうがスムーズに展開できます」
(編集部・渡辺豪)
※AERA 2020年11月9日号
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