「既に信頼関係ができている人から対面で言われたならば、ありがたく、まっすぐに受け止められたと思います。でも、人となりもよくわからない相手から、文面で、あるいは画面越しに言われるその言葉は弓矢のようにキツイものでした」
勇気を出して先輩に相談したが、「受け取り方が曲がっている」と返された。日々、自分のダメなところを突き付けられる。「自分は最低だ」と感じるようになっていった。ダメな自分はもっと頑張らなければいけない。根本から自分を叩き直さなければ……。必死だった。泣きながら仕事をし、夜遅くまで、そして朝も早くから勉強を続けた。ずっと胸が苦しかった。
そして、あの日を迎えた。
「私が入社した会社が新人のフォローに無頓着だったとか、特殊だったわけではないと思います。忙しいベンチャーですが、研修も基礎的な業界の説明から詳しくやってくれた。それでも、在宅勤務で信頼関係が築けず、相談できる相手もおらず、負の循環が続いてしまった」
■孤立感増し達成感なく
それまでと周囲の環境が激変する新入社員は、元々心身に不調をきたしやすいとされる。だが、今年はその傾向がより顕著だ。職場のメンタルヘルスを支援する「みんなの健康管理室」代表で茗荷谷(みょうがだに)駅前医院院長の植田尚樹医師は言う。
「夏以降、不調を訴える新入社員が例年より明らかに増えています。不安が強い、落ち込む、気力がなくなる、イライラするなど、うつ病の一歩手前、『プレうつ』とでもいうべき適応障害のようなケースが多い」
実感として、リモートワークの日数が多い人ほど不調をきたしやすいと感じる。植田医師は原因として、「精神的な孤立感」「達成感がない」「将来に対する不安」の三つを挙げる。
「リモートではわからないことを先輩に聞きづらいだけでなく、同期と愚痴を言い合うこともできません。仕事の成果も見えない。会社にいれば、自分がどのくらいできているのかなんとなく感じられますが、在宅ではやってもやっても達成感がなく、まじめな人ほどやりすぎてしまいます。安心できず、将来への不安が強くなって心身に異常をきたすのです」