今年の新入社員は、入社と同時にリモートワークとなる人も多かった様子。人間関係を作れぬままのリモートワークはストレスが多く、なかには退職に追い込まれるケースも。AERA 2020年11月9日号の記事を紹介する。
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今年春、新卒で人材関連のベンチャー企業に入社した女性(23)を異変が襲ったのは7月初旬のことだった。
目が覚めても、ベッドから起き上がることができない。体が鉛のように硬く、動かない。入社してから、ずっと在宅勤務。日々つらい、苦しいと思い続け、心身が突然限界を迎えた。
同居していた恋人に助けを求め、心療内科へ駆け込んだ。付いた診断は適応障害。医師には「今の環境から離れないと治らない。すぐに会社をやめたほうがいい」と言われたという。女性は7月末で退職した。
「右も左もわからない中でのリモートワークはすごくつらかったです。発言できるタイミングがわからないし、文字で頂く指摘もきつかった……」
新入社員は女性を含めて3人。しかし、ほかの2人は在学中からインターンでほぼ同じ業務に従事しており、知識・経験に大きな差があった。研修中も2人が当たり前のように理解できることが、なかなかわからなかったという。
「はじめのうちはわからないと言えたのですが、私だけのために時間をとってもらうのが申し訳なくなって……」
■画面越しに言葉の弓矢
研修終了後に復習し、それでもわからないところを翌日質問するようにしたという。寝る間も惜しんで勉強を続けた。
3週間の研修が終わり、正式に業務が始まっても状況は変わらなかった。ひとりだけ仕事がわからない。質問しようにも、相手の様子が見えず、連絡するタイミングをつかめない。
「実際に出社していたら、横にいる先輩に『いま1分ください!』と言って質問できたと思う。リモートだから『わからない、でも聞けない』が続き、やりにくかったです」
先輩社員からの指摘やフィードバックもきつかった。日々提出する日報には、言葉の選び方などに対する指摘が書き込まれた。上司とのリモート面談でも、「吸収が遅い」「努力が感じられない」「将来のビジョンがおかしい」など辛辣な言葉が画面越しに突き刺さってくる。褒められたり、仕事ぶりを認められたりすることはなかった。