インタビューを受けた三浦大知(写真/植田真紗美)
インタビューを受けた三浦大知(写真/植田真紗美)

「絶景の写真を見るのが好き。ここにもいつか行ってみたいと思っています」

 三浦大知の今回の新曲のモチーフは、米アリゾナ州のアンテロープ・キャニオン。その景色に触発された最新シングル「Antelope」は、ストレートに愛を歌うバラードだ。

「風や雨によって形成されたアンテロープキャニオンの削られた姿が美しいのは、頑張って耐えて生きている人が美しいのと似ています。今年、心が削られた人が多いでしょう。きれいごとと言われてもいいから、自分の周りには目に見えない小さな愛が沢山あると気づいてほしいと思いと作りました」

 コロナ禍のため、ライブの中止が相次いだ。しかし
「動くことが重要なんだと思い、楽曲の制作をしました。レコーディングスタジオに行けなくても、家でできるので。子どもがいるので、毎日、育児して楽曲作って。怒涛のような時間でした」

 沖縄出身の三浦は、昨年、「天皇陛下御在位三十年記念式典」にて天皇陛下(現上皇さま)が作詞、皇后陛下(現上皇后さま)が作曲された琉歌「歌声の響」を歌い、大きな話題を呼んだ。

「歌わせていただき、本当に幸せでした。一生に一度のことだと思いますので。沖縄の抱えている歴史はとても複雑で、とても深い。僕は沖縄出身ではありますが、そのすべてを網羅できているというわけではありません。ただ、祖父や祖母から戦争の話を聞く機会はありました。祖父も祖母も沖永良部島で、みんなで逃げるときに歌いながら山を越えたんだそうです。歌うことでつながりを持てた。歌を心の支えにして、1日1日を耐えていた、と。歌には強い力があると思うんです」

 強い力を持つ新曲で、愛が伝染していけばいい。

プロフィール
みうら・だいち 1987年、沖縄県生まれ。Folder のメインボーカルとして1997年にデビュー。2005年、「Keep It Goin’ On」でソロ・デビュー。17年に「EXCITE」で日本レコード大賞優秀作品賞受賞。11/11(水)に通算27枚目となるシングル「Antelope」をリリースした。
(本誌・菊地武顕)

週刊朝日  2020年11月20日号に加筆