今もまだ残る古き良き店を訪ねる連載「昭和な名店」。今回は荻窪の「中華徳大」。
【写真】1997年にリニューアル。厨房でのテキパキとした動きがよく見える店内
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長年、コース料理などを出す本格中華料理店で働いてきた青柳禎一さんが、独立を決意。東京・荻窪にラーメンを主体とする店を出した。1974年のことである。
妻のマサ子さんが語る。
「それまで下町のほうに住んでいたんですけど、中央線沿線の雰囲気が良く感じたんですよ。この場所を見てすぐに決めました」
とはいえ、荻窪は都内きってのラーメン激戦区。生き残るために、
「お父さんは都内の名店を食べ歩いたうえ、ゴミ箱を見て材料を研究したとも言ってました(笑)」
スープは2日かけて作る。1日目は豚のゲンコツなど、2日目は煮干し、昆布、トリガラ、モミジ(鶏足)などで。毎日でも食べたくなる、まろやかな味わいだ。
もともと本格派の料理人だけに一品料理も好評。それで次々にメニューを追加し、今や60~70品にも! また巧みに操る鍋で作るパラッとしたチャーハンが評判に。飯の上に大きな卵を載せたチャーハンがインスタ映えすると、若い女性客に人気を呼んでいる。
開店当初は就学前で、店内で遊んで時間を過ごしていた娘さんが、今は夫とともに両親を手伝い、厨房で働いている。店の歴史を感じさせるが、78歳の禎一さんはチャーハンを振る鍋だけは譲らない。(取材・文/本誌・菊地武顕)
「中華徳大」東京都杉並区荻窪5‐13‐6/平日11:30~13:30L.O.17:30~20:00L.O.土17:00~20:00L.O./定休日:日祝
※週刊朝日 2020年12月4日号