※写真はイメージです (GettyImages)
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血液中のアミノ酸の状態 (週刊朝日2020年12月25日号より)
血液中のアミノ酸の状態 (週刊朝日2020年12月25日号より)

 認知症予防といえば、脳トレや運動をイメージする人は少なくないだろう。近年、歯周病による影響など「口腔ケア」も注目されているが、「心臓病予防」「栄養改善」の対策も、認知症の発症を抑える可能性があることが最新研究で明らかになった。その詳細をお伝えしよう。

【グラフ】認知機能が健常な人とMCIの人の 血液中のアミノ酸の状態を比較

「全身に動脈硬化があると脳の血流が減ります。その結果、脳の機能が低下し、認知症になりやすくなります」

 国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)の猪原(いはら)匡史部長(脳神経内科)は、そう指摘する。

 脳に十分な血液が届かないと酸素や栄養が行き渡らないため、酸欠、栄養不足に陥った神経細胞がダメージを受けやすい。だが、その理由とは別に、認知症になりやすい仕組みがあるという。

 体には老廃物や不要な水分を排出するリンパ管という器官がある。ところが、脳にはなぜかリンパ管がない。代わりに老廃物の排出などの役目を担っているのが血管だ。

「動脈硬化で血管が硬くなり収縮力が落ちると、老廃物の処理も滞ります。そのため、アミロイドベータやタウタンパクが排出されないで残ったままになります。脳に老廃物がたまれば、それだけ血管性認知症やアルツハイマー病のリスクが高まるのです」(猪原部長)

 動脈硬化は狭心症や心筋梗塞(こうそく)の原因としても知られている。イギリスは2005年から「心臓病予防イコール認知症予防」とする国を挙げたキャンペーンを行い、大きな成果を出した。

「13年に認知症が減ったという報告が、著名な科学雑誌に掲載されました。75歳以上のすべての世代で認知症が2~3割減少したと報告されています。禁煙や減塩はもとより、心臓病の原因となる高血圧や糖尿病の治療を積極的に行ってきた結果、認知症を減らせたのです」(猪原部長)

 また、今年10月、心臓病の一つで心房細動という不整脈のある人にカテーテルアブレーションという治療をすると認知症が減ることが、韓国から報告された。アブレーションとは血管内にカテーテルという細い管を挿入し、先端から出る高周波で不整脈の原因となる心筋を焼くという治療法で、心拍のリズムが整う。

 報告によると、韓国で抽出された心房細動患者83万5千人のうち、アブレーションを行った群と薬物治療だけをした群を比較。約52カ月後、前者の群のほうが27%も認知症になる人が少ないことがわかった。

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