ところが昨年「仕事が原因」で自殺した人は警察庁発表で1,949人もいます。労働環境を改善しない職場で、未だにたくさんの人が犠牲になっているのです。
国は本気で過労死等の防止に向き合い、すべての業種で過労死ラインの労働とハラスメントを禁止し、11時間以上の勤務間インターバル制度を義務化し、過労自殺を無くして欲しいと思います。どうかこれ以上私たち母娘のような犠牲者を増やさないでください。
またこの一年、人々の意識から過労死問題の風化を感じています。過労死の記者会見があっても、報道されることが少なくなりました。過労死・過労自殺が無くなっていないのに、問題が風化することは、国民の命と健康を守ることが困難になると大変危惧しています。
新型コロナウイルス対策で、在宅勤務を導入し社員の健康に配慮した働き方の改善に努めている企業がありますが、在宅勤務で逆に労働時間が増えている人もいます。コロナ禍にあっても、コロナ後においても改善を継続して欲しいと思います。
電通に関する報道があるたびに言葉にできない複雑な心境になりますが、電通に対しては引き続きグループ全体での労働環境の改善の取り組みを注視して参ります。
社員の個人事業主化ということが政策に上がっていますが、会社の労務管理の責任が曖昧にならないように取り組んでいただきたいと思います。
また、日本でこれまで立場の弱い人たちが、コロナ禍で一層追い込まれていると感じています。非正規雇用労働者、低賃金の業種、ひとり親家庭などの年収が低い人達が、さらに生活が困窮して追いつめられています。
国の雇用政策の中で、望まないのに非正規雇用に就いている人は年々増加しています。私が長時間労働の削減を訴える度に「残業代が減って困る」という声があがります。生活の為に長時間労働をしなければならないような、労働条件の悪い雇用形態をやめ、賃金を底上げする労働政策に転換して欲しいと思います。このような政策は貧困対策や、虐待、いじめ、少子化対策、子育て支援、自殺防止、過労死防止にもつながるのではないでしょうか。
自殺者の増加にも胸を痛めております。相談体制の充実は重要ですが、国民の生き辛さの根本的な問題の解決を行い、あらゆる人の痛みに向き合い、支援し、救済し、必死で生きている人たちが報われる国にして欲しいと思います。
私は2年間、厚生労働省の過労死等防止対策推進協議会において遺族の代表の1人として、娘が苦しみの中で命を絶った経緯や、長時間労働やハラスメントの恐ろしさを語り、過労自殺を無くす実効性のある対策を講じて欲しいと訴えて参りました。
日本が、誰もが安心して活き活きと働き、若者たちが希望を持って人生をおくれる国になるように発言していくことが、娘が私に遺した使命と思い、微力ながらまつりと共に力を尽くしてまいります。 (原文ママ)