

旧日本軍の元従軍慰安婦の女性らが日本政府に損害賠償を求めた訴訟で、ソウル中央地裁が8日に日本政府に慰謝料の支払いを命じる判決を出したが、この判決で動揺したのは実は、ほかならぬ韓国外交省だった。
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日本政府は判決後直ちに抗議したが、外交省はなかなか立ち位置をはっきり示さなかった。数時間後、ようやく出てきた報道官の論評には「判決の外交関係に及ぼす影響を綿密に検討する」とあった。だが、複数の関係者によれば、日本は半年以上前から、さまざまなルートを使って、「仮に損害賠償を命じる判決が出たら、大変なことになる」という警告を送っていた。
今頃になって「検討する」と言い始めたこと自体、事態を真剣に捉えていなかったと言われても仕方がない。実際、韓国側は、日本が「大丈夫か」と何度も何度も訴えても、「三権分立ですから、司法には介入できないんですよ」「でもまあ、主権免除(国家は外国の裁判権に服さないとする国際法上の原則)になるでしょうから、大丈夫ですよ」といった反応だったという。
さすがに、バツが悪かったのか、論評には「(韓国)政府は2015年12月の韓日政府間慰安婦合意が両国政府の公式合意だという点を想起する」というコメントが付け加えられていた。「日本も努力してきたことは認めます」と言わんばかりの内容だが、日本にしてみれば「慰安婦合意を反故(ほご)にしたのは韓国だろう」という思いが走る。
もちろん、従来から指摘されていたように、韓国外交省にはほとんど実権がない。しかも、18年夏には、朴槿恵(パク・クネ)前政権時代の大法院(最高裁判所)が、徴用工裁判に違法な介入をした疑いがあるとして、関係先の外交省の本部が家宅捜索を受けるという屈辱も味わった。「判決を遅らせるよう介入したという疑いで捜査されたんだから、判決の内容に介入するなんてとんでもない」というのが外交省関係者らの本音だ。
では、最大の権力機関である大統領府はどうか。韓国記者団は判決後、大統領府にコメントを求めたが、ひたすら「外交省に聞け」という態度に終始したという。普段、自分たちが関心を持つ、北朝鮮がらみの外交問題については情報を独占しているくせに、面倒な案件は全部、外交省に下請けさせる悪い癖がここでも出た。