

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言下で、孤独に悩む人が高齢者を含む全世代で増えている。国はまだ抜本的な対策に乗り出していないが、自治体やNPOなどの民間団体、企業は「相談窓口」や「居場所」を設けるなど、問題解消に取り組む。まずはこうしたものを利用したい。
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神奈川県内の女性4人(いずれも70代後半)が、高齢者施設の入居体験に一緒に行く約束をした。ところが、当日、集合場所に来たのは3人だけ。来ていない人をみんなで迎えに行くと、玄関の鍵が開いていた。一人が先に入ると、悲鳴を上げた。来なかった女性がこたつでうつぶせになっていた。
施設を紹介し、3人に同行していたのは、横浜市で不動産業を営む飯島重善さん。3年ほど前のできごとを振り返る。
「孤独死でした」
警察に聞くと、死後10日ほど経っていたという。
コロナ禍前から、孤独は特に高齢者にとって大きな問題だった。2020年版自殺対策白書に掲載されたデータ(09年から11年間)によると、後期高齢者(75歳以上)の自殺理由として、「孤独感」は年齢階層が上がるごとに割合が増えている。特に90歳以上の男性では理由の第2位だ。
不要不急の外出自粛を求められるコロナ禍では、全世代にわたって孤独の問題が深刻化。厚生労働省では孤独対策の一環として、ホームページで困ったときの相談方法・窓口を紹介している。
代表的な相談窓口の一つに、「いのちの電話」がある。日本いのちの電話連盟によると、19年に約58万件(フリーダイヤル、東京英語いのちの電話を除く)を受信。相談件数は40、50代が半分近くを占め、60代以上も2割近くいた。
連盟によると、自殺を考えている人は、年代を問わず、孤独、孤立、話す人がいないということが大きな要因だという。孤独感を覚えたり、悩みがあったりしたら、まずは電話で相談するのもいいだろう。
また、コロナ禍でも相談対応を十分できるように、連盟は相談員を募る。