2021年のF1は日本人にとって、特別な一年となる。それはホンダが今シーズンを最後にF1を去ることが決定しているからだ。
F1ラストイヤーとなる2021年に向けて、ホンダは新しいパワーユニットを開発。レッドブルとアルファタウリの2チームに供給する。もともとこの新パワーユニットは2021年に投入される予定だったが、昨年の春に新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大して、ファクトリーが一時閉鎖されたため、2022年に延期することになっていた。
しかし、昨年の7月にF1が4カ月遅れで開幕すると、ライバルであるメルセデスとの差が想像以上に大きかったことを踏まえ、ホンダは1年前倒しして、当初の予定通り、2021年に新パワーユニットを投入することにした。
この新パワーユニットについて、ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターは「2020年から2021年にかけて、レギュレーションで車体に大きな変更を施すことが許されていないので、そこに搭載するパワーユニットも外観が大きく変わるような変更はできない。したがって、見た目の変化はないでしょう」と語り、ターボやエネルギー回生システムに関するパーツのレイアウトや、パワーユニット全体のサイズに変更はないことを示唆している。
では、どこが改良されているのか。
「弱点を強化しつつ、強みを伸ばすという形で新パワーユニット開発をしています。それにはICE(エンジン本体)とERS系(エネルギー回生システム)のバランスが重要になるので、どうしていくのかは、総合的に判断して決めていきます」(田辺)
田辺TDが言う「弱点」とは、“デプロイ”のことだ。デプロイとは、ERS(エネルギー回生システム)で回収した電気エネルギーの量やその配分(どこでどう効率的に使うか)、またはエネルギーを放出することを指す言葉で、2014年から導入されたエンジンとモーターの2つの動力源を持ったハイブリット時代で重要なテーマとなっている。このデプロイが、ホンダはまだメルセデスに追いついていない。