決勝戦は、フランスとアルゼンチンが戦い、アルゼンチンが36年ぶりに優勝をしたそうです。36年前(1986年)と言えば、神の子・マラドーナが手でシュートを決めて「あれは俺じゃなくて神の手だ」で優勝した大会。当時フォークランド紛争でイギリスへの遺恨を残していたり、とにかくアルゼンチンのモチベーションは全方位的に凄まじかった大会だったのを憶えています。あれから36年。神の子マラドーナも晩年は「老舗ゲイバーのママ」のような風体になり、残念ながら20年に亡くなりました。

 一方、現在のアルゼンチンサッカーを牽引しているのは、スーパースター・メッシです。メッシが凄い選手であることは知っていますが、実際どれだけ凄いのかは、あまり理解していません。私にとってメッシについての唯一の手がかりは「小柳ルミ子さん」です。「メッシ」と聞くだけで瞬時に頭に浮かぶのは、号泣しているルミ子さんの姿。無論、私が今までの人生で耳にした「メッシ」という響きの8割はルミ子さんの声によるものです。

 この2週間、世界中のSNSなどでも「メッシ」の名前はつぶやかれまくったと思いますが、おそらくルミ子さんはその100倍の量の「メッシ!」を独り自宅のリビングで発したはず。今、どこかでばったり会っても「ミッツー!」が「メッシー!」になる確信があります。だからルミ子さん、早く新曲出しましょうよ!

ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

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