難しい人間関係のひとつ、「ママ友」。学校や幼稚園のほか、マンションでも気遣わなければならないケースもあるようだ。
玄関のポストに投げ込まれたメモを読んで、3歳の一人娘がいる女性は凍りついた。
「奥様が今朝、他人の三輪車を足で蹴ったのを見た方がいます。以後、やめてください」
差出人は、マンションの下の階に住む10歳ほど年上の30代後半の主婦。近所の幼稚園でボスママ的な人物だ。
手紙の内容は事実無根。なぜこんな嫌がらせを? でも、実は思い当たることもあった。メモ事件から約1カ月前、女性は横浜市内のこのマンションに入居した。引っ越しの挨拶に配ったのは高級店の洋菓子。駐車場には、実家から譲り受けた外車をとめていた。さらにボスママの夫の勤務先は、偶然にも女性の夫の会社の子会社で、顔見知りだったのだ。
「夫は無邪気に『知り合いがいてよかったな』なんて言っていましたがとんでもない。最初からあちらは戦闘態勢。私のすべてが気に入らないようでした」
最初は気にしなかった嫌がらせは次第にエスカレートした。挨拶しても露骨に無視され、玄関前に公園のものと思しきゴミが散乱していたこともあった。それでも仕事で疲弊した夫は、「気にするな」としか言わない。
引っ越しから半年ほどたったある晩、娘に階下に足音が響かないように“忍者歩き”を強制していて、ふと我に返った。
「このままじゃダメだ」
翌日、いつも無視される挨拶の代わりに5秒間、思い切りボスママの顔をにらみつけて、無言で通り過ぎてみた。
「驚きました。翌日から猫なで声で私に話しかけてくるんです。結局は弱い者イジメしかできないかわいそうな人でした」
※AERA 2013年4月22日号