落合恵子(おちあいけいこ)/ 1945年生まれ。文化放送アナウンサーを経て、76年から子どもの本の専門店「クレヨンハウス」を主宰。「月刊クーヨン」、オーガニックマガジン「いいね」発行人。近著『わたしたち』など著書・翻訳書多数。(c)神ノ川智早
落合恵子(おちあいけいこ)/ 1945年生まれ。文化放送アナウンサーを経て、76年から子どもの本の専門店「クレヨンハウス」を主宰。「月刊クーヨン」、オーガニックマガジン「いいね」発行人。近著『わたしたち』など著書・翻訳書多数。(c)神ノ川智早
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 昨年公開のフィクション映画「PLAN75」はリアルな現実と架空の近未来が重なって観る人の心をかき乱した。理由は「75歳以上に安楽死を勧める制度ができたら──」という世界を描いていたから。作家で、クレヨンハウス代表の落合恵子さんに「映画のような社会を現実のものとしないために私たちに何ができるのか」について聞いた。

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■「年金生活者も立ち上がっていい」

 主役の倍賞千恵子さんといえば、私の世代にとって、1963(昭和38)年の映画「下町の太陽」(山田洋次監督が映画化)をまず思い出します。その方が、いま81歳で主役をされている。素敵に年齢を重ねられていますね。自然な老いによる表面的な変化もそのまま見せておられる。

 作品を観て、私は「政治や社会から自らの最期を押し付けられることはお断りします」。そう、改めて強く感じました。人は誰もいつかは死を迎えますが、私はそれを国に管理されたくない。可能な限り、自分で自分の最期を決めたい。

 私は長年、毎年1月1日に、おおまかに言うと「自然のまま、私を逝かせてください」という内容のリビングウィルを書いています。30代と40代で仲のいい友人を亡くしたときの宿題として、医療従事者や周囲の友人たちが後々「あれでよかったのか」と苦しまなくていいように、私の意思を文書で残しています。

 弱者をないがしろにするような政治が続いて、生きにくさを感じる社会ですよ。私が国葬反対、原発反対、改憲反対とデモに参加しているのは、民主主義の基本である、私たちひとりひとりが社会に参加しているのだ、という感覚を確認したいからでもあります。

「パンとサーカス」という言葉があります。権力者は市民にわずかな食料と娯楽を与えておけばいいという意味ですが、私は「パンは自分で作ります、タネから。サーカスも勝手に示さないでください。自分たちで考えます」と。そうしないと、結局は政治や制度にからめとられてしまいます。

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