「今日から自分も苗字を付けて名乗ろう」というのは、例えば芸名や四股名、はたまた源氏名を考えるのと同じ行為です。時の偉人や人気者にあやかったり、将来の願望を込めたり、名付け方はいろいろあります。女装の世界でも、あやかり系のパロディ・ネームは少なくありません。名古屋の「釜愚痴ホモ恵」や、大阪の「中森アベナ」などはその代表格でしょう。沖縄で活動する「アブラマミレ」というドラァグクイーンも、その名前の由来が安室奈美恵であることを先日知りました。で、私の苗字である「徳光」ですが、どう考えても「徳川家光」にあやかった、極めてミーハーかつ水商売性の強い名前な気がしてなりません。
昔から冠婚葬祭などで「徳光家」という文字を見るたびに、「おそらく冗談半分で付けた名前が、よもや数百年も残るとは……」と申し訳ない想いに駆られます。しかも徳川家光って、無類の「男好き」だったとか。ありがたや。ありがたや。
ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する
※週刊朝日 2023年2月10日号