タイミー代表 小川嶺さん(23)/立教大学経営学部4年。自身がアルバイトをしたときに感じた不満から、空いた時間に、1時間単位で面接や履歴書なしにアルバイトができるマッチングアプリ「タイミー」を開発。サービス開始から2年ほどで約30億円の資金を調達した(撮影/写真部・張溢文)
タイミー代表 小川嶺さん(23)/立教大学経営学部4年。自身がアルバイトをしたときに感じた不満から、空いた時間に、1時間単位で面接や履歴書なしにアルバイトができるマッチングアプリ「タイミー」を開発。サービス開始から2年ほどで約30億円の資金を調達した(撮影/写真部・張溢文)
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 誰でも空き時間に面接や履歴書なしで働ける。そんな単発アルバイトのマッチングアプリをリリースしたタイミー。率いるのは現役大学生の小川嶺さんだ。自身の経験から大学生が起業しやすい場づくりが大切だと言う。AERA 2021年3月29日号は、事業成功の理由や今後の大学の役割などについて聞いた。

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 遊ぶ約束をドタキャンされた俳優の橋本環奈さんが、「あ、バイトしよ」と思い立ち、いきなり飲食店で働き始める。そんな印象的なCMを覚えている人も多いだろう。

 アプリケーションの企画・開発を行う「タイミー」は、東京・池袋に本社を置く急成長中のベンチャー企業だ。同社は2018年8月、単発アルバイトのマッチングアプリ「タイミー」をリリース。現時点でユーザー数は170万人、導入店舗数は3万4千店に達した。

■自分が起業家を育てる

 同社を率いる小川嶺(りょう)さん(23)は、経営者でありながら、立教大学経営学部に在籍する現役大学生でもある。高校時代に生徒会長としてリーダーシップを発揮した経験から起業を志すようになり、大学入学後は、自らが発起人となり「RBSA」(起業家育成団体)を立ち上げた。

「起業を志して経営学部に入ったのに、周りに起業志望の学生が一人もいなかった。だったら自分が大学内で起業家を育てて、優秀な人を将来自分の会社に引き入れようと考えました」

 大学1年次に慶應義塾大学のビジネスコンテストで優勝。そこで得た賞金を元手に、2年次には、アパレル関連事業の「Recolle」を立ち上げ、エンジェル投資家から500万円の出資を提案される。だが、「ファッション業界の重鎮の方々に比べ、自分は人生を捧げるだけの覚悟と熱量が足りていない」と判断し、出資を辞退。その後、事業で出した数十万円の借金を返済するために、さまざまなアルバイトを掛け持ちして働くなかで閃(ひらめ)いたのが、現在のタイミーのサービスだった。

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